第三十話 会う
(パラソマとほとんど同じ顔! 多分ケルンだ! 会いたいってお願いは通ったんだ)
マナはケルンの情報を調べてみる。
名前 ケルン・プラネット 21歳♀
好感度171 好きなタイプ 頭の良い人 好きな物 レアな物 趣味 盤上遊戯
性格 計算高い 自信家
(なんか思ったより好感度あるんだけど。最初そんなに上がってたの? でも、それならば、牢に後戻りすることもなかったはずよね?)
200までは上がっていないが、171もあればある程度お願いを聞いてくれそうだとマナは思った。
(会っていない間になんか知らないけど上がったのかな? そういうこともあるの? この人ジェードラン並みにチョロインじゃないんだろうか)
マナはそう推測した。
服装を見る限るやたら気合の入ったドレスを着ているので、もしかして会うために準備したのかと思い褒めてみる。
「ケルンさん、そのとてもきれいだね」
「そ、そうじゃろう、そうじゃろう。お主に会うから準備したのじゃ」
かなりケルンは嬉しそうに頬を赤く染めてそう言った。
それで好感度があっさり200へと上昇。
やはりかなりチョロイとマナは確信を持って思った。
「って、そうじゃない! こ、これはどういう状況なのじゃ! サイマスが抑えられており見知らぬ者が二人……いや……よく見ればお主はジェードランじゃな!」
ケルンは状況が分からず混乱しているようだ。
マナは全て説明する。
「そのサイマスって人がアタシを殺しに来て、そこを二人が助けに来たの。何でこの二人が来たかは、予想できるでしょ?」
ケルンは、マナがジェードランたちを魅了したという情報を得ているので、理解は出来ていた。
「貴様がマナ様を攫ったケルンか! 万死に値するぞ!」
ハピーがケルンを憤怒の形相で睨み付ける。
「サイマス! お主姫を殺そうとするとは、何ということじゃ!」
「ええ!? 万死に値するとか言われているのに、俺に注意するんですか!?」
「あんな頭の悪そうな女は無視で良い。お主はわしに背いたのじゃぞ!? しかも、姫を殺そうなどと、何と恐ろしい……」
「背いたのは申し訳ありません……しかし、俺はケルン様のためを思い……」
「誰が頭の悪そうな女だ! 斬り殺してやる!」
「ちょっとやめなさいハピー!」
場が混乱してきた。
「あー、アタシは特にサイマス? には怒ってないから、そんなに攻めなくていいし、ケルンも良くしてくれたから、怒る必要もない。おk? アタシはただこの城のあるっていう図書館に行きたいだけなの!」
面倒になってきたマナが、本音を叫んだ。
ハピーはケルンが良くしてくれたとマナが言ったので、少し怒りが収まってきたようだ。
「姫が怒っておらぬというのなら、別にええがのう……ところで、図書館に行きたいとお願いするのが、わしを呼び寄せた理由か?」
実際は違うが、マナは頷いた。
「図書館くらいいくらでも見てよいぞ」
「ま、待ってくださいケルン様! 図書館は重要な情報もたくさん治め得られております! 部外者に見せるわけにはいけません」
「それもそうじゃが。姫は何を知りたくて図書館に行くのじゃ?」
「世界の神殿について詳しく調べたいの。ほかの情報は見ないって約束するよ」
「ならいいじゃろ」
「う、嘘ですよ! 神殿なんて興味ある幼女なんてこの世に数人しかいませんよ!」
確かに傍から見れば、神殿を調べる理由は思い浮かばないだろうなとマナは思う。
「わしは姫を信じる。お主は姫が怒らぬと言ったから、処罰を免れたのに、恩をあだで返す気か?」
「ぅ……」
そう言われたら、サイマスに返す言葉はなかった。
「じゃあ、わしは図書館を開かせに行く。侵入者撃退用の罠を解除したりせねばならんから、すぐには入れんようになっておるのでな。少し待っておれ」
ケルンはそう言って、部屋から出ていった。
一連の流れを見ていたジェードランが口を開く。
「何はともあれ、神殿について調べられそうで良かったじゃないか」
「うん、二人とも助けてくれてありがとね」
マナに褒められて、ハピーは満面の笑みを浮かべ、ジェードランは逆に険しい表情をしたが、内心幸せに満ち溢れていた。
「あの……マナ様……褒美を頂いてよろしいでしょうか?」
嫌な予感を感じたが、助けてくれたのは事実なので褒美を上げることにした。
「何が欲しい」
「頭を……撫でてほしいのです……」
今までの変態的な要求から考えると、まともな要求が来たと思い、マナは頭を撫でた。
だが、物凄く鼻息を荒くして、「はぁはぁ……これで幸せが頭から全身に駆け巡って……私の魂まで響き渡り、そして…………」と気持ち悪い呟きをし始めたので、速攻頭から手を離した。
「ジェードランは何かいらない?」
「俺はいらん」
「撫でてほしくない?」
「ない!」
と言いながら頭を突き出してきた。
相変わらず素直じゃない奴だと思いながら、マナはジェードランの頭も撫でた。
「ふん、人間の子供によくもまあ、そう手なずけられたものだな」
サイマスが憎まれ口をたたく。ジェードランは痛いところを突かれたので、何も言い返せない。
ハピーは逆に、
「いいか? 幼い子供というのは世界で一番尊い存在で、その上、マナ様はこの美しさ。この世の全てを統べる、神秘的な存在なのだ。そのマナ様の神秘が理解できない貴様は、愚か者であり…………」
と長々と説教を開始した。
「こいつはどうするんだ? お前に従っていないようだが」
「うーん……」
マナは考える。
(今からでも魅了するか。ある程度好感度は上げておこう)
マナはサイマスの目を見つめて、情報を見る。
名前 サイマス・ドッドル 19歳♂
好感度-50 好きなタイプ 頭の良い者 好きな物 花 趣味 盤上遊戯
性格 主思い 直情的
(好感度低ッ! 当たり前か……)
これはそう簡単に上げられないなとマナは思う。
少なくともケルンが戻ってくるまでは、難しそうだ。
とにかく、自分は害意はないということだけは分かってもらおうと思った。
「あなたからすれば、主を狂わせたアタシは憎いでしょうけど、別に害意があるわけじゃないの。これは信じてほしい」
そう聞くとサイマスはため息を漏らした。
「元々お前を連れてきたのは、ケルン様の野望のためだ。だからお前を憎むなどとは筋違いだ。……ケルン様がお前を信じるというのなら、俺もお前を信じるべきだろう」
好感度がー50から0へと上昇した。
嘘も言っていないとマナは直感で思い、解放していいと判断した。ジェードランとハピーに拘束をやめろと命令する。
心配だった二人は、渋々拘束をやめた。
サイマスは嘘はついておらず、マナに襲い掛かってくるようなことはしなかった。
それから数分後、ケルンが戻ってくる。
「準備が出来たぞ。案内するから付いてくるのじゃ」
「うん」
ケルンの後を付けていく。
すると、
「ケルン様。飛王の動向ですが、定例報告です」
ケルンの家臣がそう言ってきた。
マナは疑問に思い尋ねる。
「なに定例報告って」
「この国で一番の権力者は飛王じゃからな。奴の動き密偵に調べさせ、定期的に報告させておるのじゃ」
「ふーん、頑張ってるんだね」
マナは最初はそれほど強い興味を抱かなかった。
「"ポーラハム神殿"へ自ら少数の兵を率いて出陣したようです」
だがその言葉を聞いた時、脳内を雷が迸ったような衝撃が貫いた。
「ご苦労……ほう、ポーラハム神殿ね」
「――――――――そこだ」
「ぬ?」
「アタシが行かなければいけない神殿は……ポーラハム神殿だ!!」
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