第7話 労働

2020年12月20日

     <<前へ 目次 次へ>>

 ペペロン達が金稼ぎと町で取引をしていた頃。
 ファナシアとガスは食料と水を取りに行っていた。
 その時、とあるモンスターに出くわしていた。

「なーガスー、あれ食えるかなぁー?」

「あーどうだろう。食えるっちゃあ食えるかもな。まあでも進んで食うようなもんでもないよなー」

「ペペロン様は好きなのかなー」

「王様の好きな食べ物ってオレしらねーな。でも、あいつではたぶんないだろう」

「そうなのー……? うーん、じゃあやめとこうかなー喜んでもらえないかもしれないしー」

「好きではないけど、嫌いではないかも? 王様ならファナシアが頑張って取ってきたものなら、何でも喜びそうではあるがねー」

「本当!? じゃあ、さっそくあれ取って来る!」

「あー、行っちまった。ま、いっか。でもあの蛇、何でこんな所に居るんだ? 」

 出くわしたモンスターはジャイアントアーススネーク。巨大な蛇のモンスターだ。
 普通洞窟とかにいるのに、何でこんな所にいるのかとガスは疑問に思う。

 ファナシアがジャイアントアーススネークに向かっていくのを見て、ガスは、

「まあ、あれの相手はファナシアで十分だなー。オレは水でも取ってくるかー」

 ガスは近くにある川に水を汲みに行った。

 ファナシアは凄まじい速さでジャイアントアーススネークに向かって走る。ジャイアントアーススネークはファナシアが来るのを察知し、シャー! と威嚇をする。
 ファナシアは、両方の腰に片手剣を装備している。二刀流が彼女の戦闘スタイルだった。
 ジャイアントアーススネークに接近すると、右の腰の剣を左手で、左の腰の剣を右手で抜く。
 目にも止まらぬ速さで抜かれた剣が、ジャイアントアーススネークの首を斬る。綺麗に斬り裂かれ、ジャイアントアーススネークの首が落ちた。

「よーし、倒したー!」

 ファナシアはもっているスキルが全て近接戦闘系のスキルで、ほかのスキルは一切無い戦闘マシーンだった。単純な戦闘能力だけならペペロンの次に強い。その反面頭は少しあれで、戦闘以外では役に立たないという欠点もある。

 その後、ガスが水を汲んで来た。2人は水と蛇を持って拠点に帰還した。

 ○

 ノーボとポチは資材集めを担当していた。
 彼らは拠点南東にある森に来ていた。

「まずは、何を作るにも必要なのは木材です。ポチさんあなたの剣で木を切ってください」

 ノーボがそう言った。ポチは背中にかなりデカイ剣を背負っているのだが、

「あのなぁ、ノーボ。俺の剣は木を斬るためのものじゃねーつーの。もっとあれだ、大事なもん斬るためのもんなんだよ。ペペロン様に立ちふさがる敵はこの俺がゆるさん! とかかっこよく決めているとき以外に抜いちゃいけねーんだよ」

「しかし、ほかに木を伐るための道具はございません。あなたのその無駄にデカイ剣は、木を伐るのに適しているように見えます。それともあなたの剣の腕で木を伐る事は不可能なのですか?」

「斬れるに決まってるだろ。俺はグロリアセプテムの切り込み隊長ポチ様だ! あの木くらい簡単に斬ってやろーじゃねーか! 

 ……ってなるわけねーだろ! そんな手に騙されるか、馬鹿にしやがって」

「ファナシアに通じた手が通用するほど甘く無かったですか……まあ、でもほかに伐る方法ないので、ほんとさっさと伐ってください。ペペロン様のためだと思ってお願いします」

「はぁー。しゃーねーな。分かったよ。斬ってやるよ。斬ればいいんだろ」

 だるそうに言いながら、ポチは背中から剣を抜き木を伐り始めた。
 すぱすぱと、次々に伐れていく。

「木こりの人が涙目になるくらいのスピードで伐られていきますね。では運ぶのは私が担当いたしましょう」

 ノーボは、伐られた木を取って運ぶ。巨人なので持てる量が多い。軽々と持って木を拠点へ運び込む。

 長いこと作業をし、

「木はだいぶ集まったのでもういらないのですが、ちょっと伐りすぎですねポチ。かなり余計に伐ってしまってますよ」

 あちらこちらに無駄に伐った木が散乱している。完全に環境破壊行為であった。

「はぁはぁ……だったら先に斬る量、教えろってんだよ。はぁ……おかげで無駄に疲れちまったじゃねねーか」

 肩で息をするほど、疲労したようすのポチ。

「すいません。でも、だいたいわからないですかね? このくらいでいいかな? って」

「あー、木を斬ってたらだんだん楽しくなってきてよー。やめどきを失ったんだ」

「最初木を伐ることに抵抗を感じてませんでしたか、あなた」

「考えってーのは、変わるときは変わるもんだ」

「そうですか……それで木を運んだ後は、石材を運びたいのですが」

「まだやるのか!?」

「木だけでは足りませんよ。もっといろんなもの集めないと。森の中央部辺りでは、良質な石材が取れましたね。行きましょう」

 今度は石を集めると決める。
 森の中央辺りに行くと、岩石地帯があった。白い大きな岩がゴロゴロと転がっている。

「これも斬れってか? 刃こぼれするのはさすがに嫌なんだが」

「いえいえ、これは斬る必要ないですよ。私がやりますので」

 と言ってノーボは拳を振りかぶり、そのまま石を思いっきり殴った。
 ノーボの手は素手だが、それでも石は砕け散る。

「これを運びましょう」

「痛くねーのかてめーは」

「問題ありません」

「そうかい」

 砕けた岩を運ぼうとすると、何やらゴゴゴゴゴゴゴと地響きが鳴り始める。
 何事かと思うと、地面から何かが出てくる。

「あー、こいつぁ」

「ゴーレムですか」

 人型の岩のモンスター、ゴーレムが出現した。
 かなりの大きさだ。巨人であるノーボよりも大きい。

 ゴーレムは手を振りかざして、思いっきりノーボに向かってパンチを放つ。
 そのパンチをノーボは片手で軽く受け止め、

「その程度ですか」

 と言った。ノーボがゴーレムの攻撃を受け止めているあいだ、ポチが素早く動き、ゴーレムの胴体を剣で斬る。グシャ! と斬るというより砕くような感じで、ゴーレムを破壊した。

「びっくりしましたが、幸運でしたね。ゴーレム石は普通の石より良質でかつ、加工しやすいのです」

「そりゃあいいな。じゃあ、運ぶかー」

 ノーボとポチは普通の岩と、ゴーレム石を運ぶ。
 これで木材と石材を集め終わった。

スポンサーリンク


     <<前へ 目次 次へ>>