第29話 ボルフの塔
ぺペロン達はボルフの塔近くの町、ラーバルに訪れていた。
ぺペロンは以前、町に入った瞬間、犯罪者扱いされた経験があった。
なので、警戒しながら街に入ったが犯罪者扱いされることは無かった。
侮蔑の目で見られるが、特に危害を加えられることは無い。
どうやら、前の町は特別差別意識が強い町だったようだ。
ぺペロン達は侮蔑の視線は気にせず歩く。
目的地は冒険者ギルド。
モンスターを倒した時、素材などをひそかに集めていた。
それを売るため冒険者ギルドに向かっている。
冒険者ギルドでは、普通の店よりもモンスターの素材を高い値段で買い取ってくれる。
売ったあとは、食料などの冒険に必要な道具を買うつもりでいた。
しばらく歩いて冒険者ギルドに到着する。ぺペロン達は中に入った。
入った瞬間、中にいた冒険者たちがぺペロン達に視線を向ける。
そしてクスクスと笑い出した。
「感じ悪いなー」
ファナシアが怒ったような表情で呟く。
「相手にするな」
ぺペロンは、ファナシアをなだめる。
ここで怒って喧嘩を売っても何も得はない。
ぺペロンは受付まで歩く。
「何しに来たんだ? ここはてめーらみたいなのが来る場所じゃないぞ?」
受付の男がそう言った。
どう考えても客に対する態度ではない。
受付の頭の中ではぺペロン達は客ではないのだろう。
「モンスターの素材を売りに来た」
態度を気にすることなく、ぺペロンは素材の入っている袋を受付に見せた。
「……これは……てめーらが狩ったのか?」
「そうだ」
「ホーンラビットの角やシルバーウルフの爪はともかく……キラーベアの毛皮? お前ら盗んだんじゃないだろうな?」
ぺペロンはまた犯罪者扱いかと少し呆れる。
「自分たちで倒して、自分たちで収集した」
「……少し怪しいが、それだけの人数がいれば劣等共でも倒せるものなのか……? まあ、いい。買い取ってやる」
受付は袋から素材を取り出して、そして金をぺペロン達に支払う。
「全部で500Gだ」
ぺペロンは500Gを受け取る。
冒険者ギルドから出るため、歩き出す。
すると、
「おいお前ら結構金貰ったようじゃねーか。本当にてめーらが倒したのか?」
「盗んだんだろ? 正直に言えよ」
冒険者の男二人に絡まれる。どちらとも竜人だ。
竜人は体が竜の鱗で覆われ、トカゲのような尻尾をつけている種族だ。
ぺペロンは相手をするのも面倒だと考えて、スルーしようとする。
しかし、
「何無視しようとしてんだてめー!」
「雑魚種族のくせに調子に乗りやがって!」
竜人の男はぺペロンの腕を取る。
その瞬間ファナシアが超反応をして、男の首を取ろうとする。
ぺペロンは慌てて、
「やめろ」
と言った。
ファナシアは竜人の男の首を斬り飛ばす寸前で、剣を止めた。
「な……!」
まったく剣を追えていなかった竜人の男は、剣を見て顔を青ざめさせる。
そして、腰を抜かしてその場で座り込んだ。
ぺペロンは何も言わずそのまま冒険者ギルドを後にした。
「な、何者だあいつら……!」
男はそう呟きながら、青ざめた表情でぺペロン達を見送った。
ぺペロン達は外に出る。
そして、
「ファナシア、あそこで騒ぎを起こしても、我々に何の得もない。あの手の輩は無視しておけばいいのだ」
「う……ごめんなさい……あいつがぺペロン様に手を出したから」
「まあ、私を守ろうとした気持ちはうれしい。今度から気を付けてくれ」
「はぁい……」
ファナシアはしょぼくれた表情で返事をした。
その後、ぺペロン達は市場で買い物をして、食料を買う。
塔は大きく短時間で攻略できない可能性があるので、それなりの量の食料を買い込んだ。
そしてぺペロン達は、町を出てボルフの塔へと出発した。
○
ラーバルから歩いて30分ほど、ボルフの塔付近に到着。
赤黒い色をした塔が、空に向かって伸びている。
かなりの高い塔で、てっぺんは雲にかかるかというくらい高い。
「塔の周辺には守護するガードウルフという、狼型のゴーレムが大量にいる。こいつらを倒して中に入るぞ」
「「「はい」」」」
部下たちは返事をする。そして全員で塔に向かって歩き出した。
すると、
「ちょ、ちょっと君たち!」
男の声が聞こえてきた。
ぺペロンは振り返ると、冒険者の格好をした人間の男女4名がいた。
「君たちあの塔に行く気か?」
「そうだが」
「やめておいた方がいいぞ。あの塔は生半可な実力の物ではどうしようもない。君たちでは難しいだろう」
男はぺペロン達に忠告してきた。
ぺペロンは男たちの態度を見て、
(こいつらはそこまで悪党じゃなさそうだな。一応心配して言っているみたいだし。でも、下に見ているのは間違いないだろうけど)
そう思った。
「それなりの難易度があるのは承知しているが、特に苦戦するほど難しくはない。心配は無用である」
「い、いやだから承知してないって! 俺たちはAランクの冒険者だけど、その俺達でも結構苦戦するような場所なのに」
言葉で説明しても分からないだろうと判断したぺペロンは、無視して塔に向かって歩き出す。
ぺペロンの後を部下たちが付いてくる。
「あ、待ってくれ!」
男も慌てて付いてきた。
そして塔のすぐ近くまで到着する。
大量のガードウルフが塔の近くにいて、一斉に視線をぺペロン達に向けて来た。
「さあ、蹂躙するぞ」
大量のガードウルフ対ぺペロン達の戦いが始まった。
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