第28話 訓練

2020年12月20日

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 出発したその日の昼。

 ペペロンは、リーチェとパナが遺跡探索のメンバーに参加したため、2人を鍛えながら遺跡に向かっていた。

 鍛えるといっても、戦闘技術的な事を教えているわけではない。
 実戦をより多くこなすことが、一番成長が早いとペペロンは思っていた。
 そのため、今は道中見つけたモンスターと、戦闘をさせているところだった。

 最初に見つけたモンスターはホーンラビット。次は角がある茶色い兎である。かなり弱く、いとも簡単に倒せる敵だ。

「倒してみろ」

 ペペロンは2人に命じた。

「はい! やー!」

 リーチェが真っ先に剣を振るいホーンラビットを斬った。
 鮮血が飛び散る。

「た、倒しました」

「まあ、ホーンラビットなら流石に楽勝か」

 簡単に倒した様子を見てペペロンはそう言う。
 ペペロンはホーンラビットを倒したあとのリーチェを注意深く観察する。少し動揺しているように見える。
 冷静スキルが低いと、どんな敵だろうと命を奪えば少し動揺するようになっている。
 一体殺しただけで、動揺の様子がわかるということは、リーチェの冷静スキルはあまり高くないな、とペペロンは分析した。

 冷静スキルは戦闘をするのに非常に重要なスキルだ。
 動揺状態が深まると、まともに戦闘ができなくなる。動揺は相手を殺すだけでなく、不利な状況から戦闘が始まる。ダメージを受ける、などによって深まる。

 冷静スキルを上げるには、とにかく実戦を積むしかない。なので、ペペロンはまずは実戦をさせまくることにしたのだ。

 またホーンラビットが出てくる。
 今度はパナがナイフで、刺し殺した。

 パナはリーチェよりか動揺している様子はない。冷静スキルがそれなりにあるみたいだ。

「この感じ思い出すっすねー」

「そうだねー」

 ガスとファナシアが懐かしむような目で、パナとリーチェの戦闘風景を見ていた。
 ガスもファナシアも元はあまり強くなかったため、ペペロンと一緒にかなり修行をしていた。
 その時の事を思い出していたのだ。

 そこからしばらく歩いて、今度は狼を発見した。
 シルバーウルフ。銀の毛が特徴的な狼だ。結構大きい。群で行動する狼で、8体いる。
 そこまで強いわけではない。
 先ほどの2人の動きを見ていたら、2人で8体を倒すのは十分可能であると、ペペロンは判断した。

 遠くにいて、相手はこちらの様子を伺っている。
 ペペロンはシルバーウルフを指差して、

「今度はあいつらを倒してこい」

 と命令した。

「はい!」

「了解」

 2人とも返事をして、シルバーウルフに向かって走り出し、戦闘を開始する。
 流石に少し不安なので、ペペロン達も少し近づいて、戦闘を見守る。

 心配は杞憂だったようで、8体の狼の連携攻撃をものともせず対処する。
 5体倒したところで、勝ち目がないと判断したシルバーウルフは逃げ出していった。追撃をしかけようとする2人に、

「逃げたやつは倒さなくていい。中々やるじゃないか2人とも」

「当然だこのくらいは」

 パナはそう胸を張りながらいい、

「あ、ありがとうございます」

 リーチェはお礼を言ってきた。

 どちらともそれなりに力量はあるようだと、ペペロンは少し感心した。
 単純な戦闘能力はリーチェが高く、戦闘への慣れはパナの方が高いと2人の戦闘を見て分析する。

(これならもっと強い敵と戦ったほうがいいかもな)

 ペペロンは、少し寄り道をすることに決めた。
 道中に強力な熊のモンスターである、キラーベアがいる森があった。
 キラーベアは極めて獰猛で好戦的なモンスターだ。
 強さもホーンラビット、シルバーウルフとは比較にならないほど強い。

 かなり危険が伴うが、強い敵と戦う時の緊迫感を味わうのが一番修行になる。もし危ないのなら助けてやればいい。怪我をしてもよほどの重傷を負わない限り、ヒーリングをすれば問題ない。
 ペペロンはそう判断して、キラーベアのいる森へ寄り道をした。

 そして、森の奥深く。
 キラーベアを発見する。

「次の相手はあいつだ」

「あ、あれですか……」

「倒せるのか……?」

 パナとリーチェの2人は、キラーベアの姿を見てかなりビビっているようだ。
 キラーベアはかなりでかい。通常の熊の五倍くらいの大きさだ。
 人間より大きい熊の五倍なので、その大きさは圧倒的だ。怯えるのも当然ではある。

「とにかく戦ってみろ」

 ペペロンは内心、倒すのは難しそうだなと思っていた。あれはキラーベアの中でも、大きい部類の個体だ。大きさに比例してモンスターは強力になる傾向があるので、あれはかなり強いだろう。
 2人の現在の強さでは倒すのは厳しそうだと、ペペロンは予想する。

 ペペロンに勝てると言われた2人も、あまり勝てるビジョンが頭に持てないのか、少し戦いを挑むのを躊躇する。

 しかし、最終的にはペペロンの大丈夫だという言葉を信じて、戦うことにした。

「はぁー!」

 最初に斬りかかったのはリーチェだ。勇気を出して、キラーベアに全力で斬りかかる。
 剣は当たったが、あまり効いている感じではない。

 キラーベアは、斬りかかられて激昂する。大きな雄叫びを上げて、リーチェに爪で斬りかかる。動きは早かったがなんとかリーチェは避けた。

 その後、パナがキラーベアの首筋にナイフを突き刺そうとするが、肉が厚くて攻撃が通らない。

 パナにキラーベアの反撃が来る。これは避けれないなと、ペペロンは判断し、魔法を撃った。使った魔法は8等級の魔法フレイムだったが、ペペロンの使うフレイムはかなりの威力がある。キラーベアは一撃で死亡した。

「やはりあの個体を倒すのは難しかったか」

「申し訳ありませんペペロン様……」

 リーチェがしゅんとしながら謝ってきた。

「なに、問題はない。これから修行をすればあの程度なら簡単に倒せるようになる」

「ほ、本当なのか? 全然歯が立たなかったけど」

 パナはペペロンの言葉を少し疑っている。

「間違いなく倒せるようになる。2人は中々見込みがある」

 これは本心だった。思ったより戦闘能力も高かったし、何よりやる気を感じられる。強くなりそうだとペペロンは直感していた。

 見込みがあると言われて、2人は嬉しそうにする。

 その後、ペペロンは実戦を積ませたり、魔法を教えたりなどをしながら、遺跡を目指した。

 2人の訓練をしながらだったので、当初の予定よりだいぶ時間がかかって、到着することとなった。

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