第23話 救出

2020年12月20日

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 ペペロンが登録ルームに入り、中の様子を見たとき、抱いた感情は怒りだった。

 リーチェが殺されそうになっていることにではない。同族の小人の少女が拷問を受けている様子を見て、怒りを感じた。冷静スキルにより、感情が動きにくくなっているペペロンではあるが、間違いなくその光景を見て、心に不愉快なざわつきを感じた。

 初めて見る相手なのに、同族であると憤りを感じるようになっているのか。ゲーム時代はそんなことはなかったが、実際に小人になると、感情が少し変わってしまったようだと、ペペロンは感じた。

 とにかく、この怒りを晴らすため、あのBBCの男を殺して、小人の少女とリーチェを救い出そうと決め、ペペロンは部屋の中に入った。

「おいてめー、小人か? 奴隷……じゃなさそうだな……」

 ペルストはペペロンを見ながらそう言った。格好から見てどう見ても奴隷でないので、奴隷ではないと判断する。

「じゃあ、何故ここにいやが……」

 ペルストはこの時点で思いっきり油断していた。
 ペペロンがものすごい速さで斬りかかってくることなど、一切想定に入れていなかったからだ。

 そのため、あまりにも呆気なく、ペペロンはペルストの首を跳ね飛ばすことに成功した。

 ペルストの首が宙に舞い地面に落ちる。

 そして首を飛ばしてから、ペペロンは気づく。

(こいつ、アジトリーダーのペルストだ。しまった殺さない方が色々使い道があったかもしれなかったのに)

 瞬殺したことを少し後悔したが、首を跳ね飛ばしてから後悔しても遅い。

(仕方ないか。とりあえずリーチェと、小人の少女の回復を行おう)

 ペペロンは切り替える。
 その後、部下たちが入ってくる。

「リーチェ!」

 ララが入ってきて、すぐリーチェに駆け寄った。同じエルフであるララは、エルフたちと1番親しかった。

「エリー、ヒーリングをお願いします」

 ララはエリーに頼んだ。ヒーリングは初期に使えている3つの魔法の1つだ。最初に使えるヒーリングは1番回復力が低く知力の低いものが使っても、対して回復しないのだが、エリー並みの知力を持つものが使えば、かなり効果的だ。

 早速エリーはヒーリングを開始する。

「……ペペロン様? ……ララ様?」

 リーチェはうわごとのように呟く。ペペロンたちが助けに来たことを信じきれていないような表情だ。

(リーチェの回復は任せて、俺は小人の子を回復するか)

 ペペロンも知力は高かったため、ヒーリングの効力はかなり高い。彼はパナに近づきヒーリングを使う。

 みるみると爪に負った傷が回復していく。

「大丈夫か?」

 パナはそういうペペロンの顔を、信じられないものを見るかのような目で見つめていた。若干顔が赤くなっている。

「本当に大丈夫か?」

 ペペロンが再度確認する。パナは我に返って、

「だ、大丈夫だし! て、てかあんた誰!? ペルストのやつ一瞬で倒して。私と同じ小人で……」

「私の名はペペロンだ」

 パナはその名を聞いた時、以前リーチェが言ってたことを思い出した。ペペロン様が助けに来てくれる。ペペロン様は強い。全部本当のことだったのかと、驚きながら思った。

「わ、私はパナっていうけど……」

「パナか。いい名だ」

「う……」

 パナは再び顔を赤くする。なんだかペペロンに見られると、顔が熱くなり、心臓の鼓動が早くなる。どうしたんだと疑問に思う。
 パナが悩んでいると、

「ララ様〜! ペペロン様〜!」

 リーチェの騒がしい声が鳴り響いた。
 ようやくペペロンたちが救助に来たということを、現実であると確信したリーチェは、泣きながらペペロンたちの名を叫んだ。

 ララがリーチェをよしよしと慰めている。

 その後、リーチェの治療も終了した。

「さて、リーチェ救出という目標は果たしたが、このアジトには他にも奴隷がいるだろう。その中に、7種族もいるはずだ。当然放っておくわけにはいかない。BBCの外道どもを殲滅し、奴隷たちを全て解放する!」

「「「はい!」」」

「では今からまず全員が、この部屋にある登録装置を使いゴーレムに襲われないようにする。登録すれば、何をしてもゴーレムに襲われなくなるので、ゴーレムを容易に殲滅できるようになる。まずは、ゴーレムどもを殲滅した後、奴隷たちを解放する」

 奴隷たち全員を登録するのは手間がかかる。なのでこの方法が1番効率的であるとペペロンは判断した。

「ちなみに登録装置は、あの上に丸い穴が開いている四角い箱のような奴だ。あれの穴に手を入れてしばらく装置を動かすと、登録されゴーレムから襲われなくなる」

 部屋の片隅に四角い箱のようなものが4つ並んでいる。これが登録装置である。
 まずペペロンが登録を済ませ。その場にいる部下達は全て登録した。パナとリーチェも登録を終わらせる。

 そして、指示に従い、ゴーレムを殲滅しに行こうとしたとき、

「侵入者~いるか~」

「いねーだろーな。どうせゴーレムに狩りつくされてんだろ」

 のんきな声が聞こえてきた。BBCのメンバーが警報を聞いて来たのだろう。ただゴーレムが倒してくれていると思っているのか、油断しきっているようだ。

 ペペロンは部屋の外に出る。外にはBBCの男が6人が、ゆっくりと歩いていた

「あ?」

「なん……」

 言い切る前に男の口が止まった。ペペロンが一瞬にして、首を刎ねたからだ。
 いきなりの出来事にほかのBBCのメンバーは硬直している。

 ペペロンは淡々と首を斬り続け、BBCのメンバーは現実を理解する事なく絶命した。

「リーチェ、パナ。こいつらがここに来たという事は、もしかしてあの警報は、お前たちが見つかったときになったのか?」

「え? は、はいそうです。ごめんなさい」

 リーチェが謝った。

「いや、謝る事ではない。好都合だ。ゴーレムに見つかったという事は、この辺にゴーレムが集まってくるということだ。ここでしばらく待って、やってきたゴーレムを片っ端から、潰していこう」

 ペペロンはしばらくこの辺に待機して、やってきたゴーレム及びBBCのメンバーを倒していく事にした。

 予想通り次々にゴーレムとBBCのメンバーがやってくる。
 来たものたちは片っ端から殲滅する。30分ほどでゴーレムを15体、BBCのメンバーを12人倒した。

「ゴーレムはこれで残り1~2体だな。この程度なら残しておいても大丈夫だ。あとはBBCの連中だが、ゴーレムの存在を絶対視しているのか、だいぶ気が緩んでいるようだし、問題ないか。最初に爆岩の自爆装置を抑えなければいけない。ガス、頼む。場所はこの部屋に繋がる抜け道を抜けると、リーダーのペルストの部屋があるが、その近くに自爆装置がある部屋がある」

「分かったっすー。さっそく行くっすー」

 ガスが返事をして、抜け道を抜ける。

「私達は、奴隷達の解放に向かうぞ。BBCの連中は見つけ次第殺せ」

「「「了解しました!」」」

 そう、命令した直後、

「あ、ペペロン様だー!」

「あー、想定外な出来事が起きて、ここに来るまで、ゴーレムと一体も出くわさなかったんだけど……どうなった?」

 ポチとファナシアが登場した。

「いいところに来た。お前らも来るんだ。説明は向かいながらする」

「は、はー。よかったんかな? 不安だったんだけど」

「ペペロン様と一緒だー!」

 ポチは不安げな表情を浮かべており、ファナシアはお気楽な感じだ。

 ペペロン達は、ファナシアとポチに説明をしながら、奴隷達がいる場所へと向かった。

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