第14話 結論

2020年12月20日

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 ペペロンは一度屋敷にこもって、BBCをどうするか考えることにした。4割の高い税率を取るか、BBCのアジトを潰して、BBCに睨まれる方を取るか悩んでいた。

 ペペロンは取引の内容を誰にも伝えずに、屋敷に1人篭って考えていた。部下たちにはしばらく中に入るなと伝えた。

 まず、税率4割。これはかなり重い。正直かなり受け入れがたい条件である。しかし、これから時間が経てばBBC以外の問題も出てきて、それを解決するたびに、税率を下げて貰えるかもしれない。
 耐えていれば徐々に状況が良くなる可能性もある。

(でもそれも、結局希望的観測に過ぎないし、そもそも部下達が4割もスパウデン家に税を払うことに納得するだろうか? 1割の税率を払う事すら、若干好感度が落ちそうなのになぁ……うーん、部下達は自分の言う事なら黙って受け入れてくれるような雰囲気が、あるにはあるけどなぁ……でも、4割の税率のせいで村の発展が遅れたら、考えを変えるかもしれないし……うーん)

 ペペロンは悩む。
 やはりBBCを潰すべきだろうか? ペペロンは考えを変える。
 BBCのアジト自体は知っている。ゲーム時代行ったことがあるからだ。行ったことがあるというか、犯罪者プレイをしていた時、長い時間、拠点代わりにしていた記憶がある。アジトの内部構造も熟知していた。

 ただ、潰す難易度は高いと言わざるを得ない。アジト内にいるBBCメンバーはそこまで多くないが、防衛のためのゴーレムが結構アジト内をうろついている。こいつらが結構手ごわい。微妙な魔法しか使えない現時点の戦力では1瞬で倒せるほどの相手ではないだろう。

 ――その上、奴がいる……

 スパウデン領内にあるBBCアジトには、ペペロンも警戒する強力な敵キャラクターがいた。
 はっきり言って潰せるという確証はなかった。

 仮に潰せたとしても、BBCから目をつけられるはめになる。
 誓約書にスパウデン家が村に攻めてきた敵は追い払うみたいな事が書かれていたが、これが対BBCだと当てにならない。BBCの連中は大軍で攻めてくるというより、こっそり近づいて暗殺してきたり、村に爆弾を仕掛けて破壊工作を行ったりという方法で村を潰してこようとするので、あまり貴族の後ろだても役に立たないのだ。
 そのため自力で何とかするしかない。

 ペペロンはとにかく考える。どちらがデメリットが多いか、メリットが多いか。どちらが今後、生き残るため最善の選択か。
 正直どっちも避けて通りたい道だった。ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、BBCを潰す事の方がいいような気がした。

(綿密に計画を立てればBBCのアジトはなんだかんだ言って、潰せるとは思う。BBCの嫌がらせもめんどくさいけど俺達のキャラスペックなら何とかなるかもしれないし、それにBBCのアジトには不遇7種族の奴隷が大勢いるだろう。これらを解放すれば、めんどくさい配下集めを簡単に済ませることが出来る)

 希望的観測が多く入った考えではあった。ただ、やはりどっちかというとBBCを潰すほうがいいという考えは間違ってないようにペペロンは思った。

 ペペロンはBBCを潰す事に決めた。しかし、もう一つ考えないといけないことがあった。

 BBCを潰す、と理由を告げずに言って受け入れてはもらえない。当然理由を説明する必要があるが、正直に税率4割を1割に下げる為に、BBCを潰しに行くと言っていいのか疑問に思っていた。
 交渉力が低くて、そんな顎で使われるような条件を飲んでしまったのだと思われると、部下達の評価が下がりそうだとペペロンは心配していた。
 出来れば、交渉で税率を4割から1割に下げて、BBCのアジトは別の理由で潰したと思わせておいたほうが、部下達からの評価も下がらないだろうという考えをペペロンは持っていた。

 ペペロンがここまで神経質に部下達からの評価を気にするのは、ここはゲームではなく現実だからだ。ゲームなら好感度が設定されており、まずい行動を取っても少し下がるだけで、特に問題にはならないのだが、現実ではちょっとした落ち度で評価が大暴落してもおかしくない。
 なので完璧なリーダーを演じ続けなければならない、そうペペロンは思っていた。

(さて……では、BBCを潰しに行く理由だけど……どうしよう。配下のエルフ達は、BBCに襲われているから、報復しようとかその辺を理由にすればいいかな? うーん、納得してくれるかわからんけど、それしか思い浮かばないなー)

 ペペロンは少し考えるが、報復しに行く以外の理由が思い浮かばない。
 納得してもらえるか微妙だったが、もうそれを理由にBBCに攻めることを宣言するかと決めて、ペペロンは屋敷の外に出た。

 ○

 ペペロンが1人屋敷にこもって考えていた頃、

(ペペロン様お悩みなられているようで……お手伝いしたいですが……)

 ララは、村長の屋敷をジーと眺めながら、少し落ち込んでいた。ペペロンが自分を頼ってくれないのは自分の実力不足が原因だと思っていたからだ。

(落ち込んでいては、いけませんわ!)

 ララはほっぺを叩いて気合を入れる。ペペロンの役に立てるようになるにはもっともっと努力するしかない。彼女は気合を入れなおして、村を発展する為の作業を再開しようとしていた。

 そんな時、

「大変です! ペペロン様! ペペロン様は居ますか!?」

 女の叫び声が聞こえてきた。誰かがララに向かって駆け寄ってくる。
 元村長であるルーシーだった。彼女は必死の表情でララに向かって駆け寄ってくる。

「どうしました? 今ペペロン様はお話を聞けない状態でございます」

「大変なんです! 今すぐ話さないと!」

「では私が代わりに聞きましょう」

「攫われたんです!」

「攫われた?」

「私の妹のリーチェがBBCに攫われてしまったんです!」

「何ですって!?」

 ララは驚愕する。

「詳しく話してください」

「えーと……リーチェは私の歳の離れた妹で……ようやく分別がつく年頃になってきたという感じの子なんですが……友達と4人と一緒に外に散歩していたら、BBCの連中と出くわしたらしいんです。リーチェは正義感の強い子で、自分が囮になってほかの子達を逃がして……」

「……なるほど。では、あなたの話はあくまでリーチェのお友達から聞いた話なのですね? そのお友達を連れてきてもらえますか?」

「は、はい」

 ルーシーは4人のエルフを連れてきた。見た目、13~4くらいの子供エルフたちだった。

「連れ去られたのは間違いない?」

「見ていましたので……」

「相手はBBCで間違いない?」

「はい、バンダナを見たので……」

「厄介な事になりましたね」

 気付けば村中の者が騒ぎを聞きつけて集まっていた。

「恐らく奴隷にして売るか、こき使うか。このまま放っておいたら、地獄のような運命がリーチェに訪れる事でしょう」

「そんな。お願いします! リーチェを助けてください!」

「無論です。助けましょう。皆、準備を」

「ちょっと待てよララ。ペペロン様の判断を仰いでから行くべきだぜ」

 ガスが止めに入る。

「ペペロン様でも必ず助けるという選択をするはずです」

「そりゃあ、分からねーよ」

「BBCは少し厄介な連中だとペペロン様がおっしゃっていたのを聞いたことがあります。村に奴隷狩りをしにいった雑魚共狩るのならまだしも、アジト潰しとなればペペロン様どういう判断をするのかわかりません。とにかく今は冷静に考えてください」

 ノーボが冷静な口調で言った。

「……そうですわね……私ごときがペペロン様の考えを推し量ろうなどと、愚かなマネをしようとしてしまう所でしたわ」

「あの……ペペロン様は妹を助けてくださるのでしょうか?」

「……それは」

 ララとしては助けてくださると答えたかった。しかし、冷静に考えると、どういう判断をペペロンが下すかは分からない。王とは時に冷徹な判断もくださなければいけない。
ペペロンが善意にあふれる選択だけを取ってきたわけではないことを、ララは知っていた。時に国の有事に備える為に冷徹な判断を下す事もあった。それが王の資質であるともララは理解はしていた。
 ペペロンが助けないという判断をしても、おかしくはないとララは考えを改めた。ただ感情では助けて欲しいとも思っていた。

「皆でペペロン様に頼み込んでみよう」

「そうだ。リーチェちゃんが、こんな理不尽な目に遭っていいわけないんだ」

 ルーシー以外のエルフ達もそう言った。リーチェは正義感が強くいい子で、村の中でも人気が高かった。
 皆でペペロンに頼み込もうと、エルフ達が村長の屋敷の前へと集結していた。

 しばらくして、村長の屋敷の扉が開き、ペペロンが出てきた。
 その瞬間、皆で頼み込もうとするが、

「皆、聞け!」

 ペペロンが大声で叫んだ。そして、

「今から我がグロリアセプテムは、BBCのアジトへと攻め入る! 戦の準備をするのだ!」

 そう高らかに宣言した。

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