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第三十三話 道中

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 ポーラハム神殿に行軍中。

「の、のう、マナフォース姫……」

 ケルンがマナに恐る恐る話しかけてた。
 何やらもじもじして、言いにくそうにしている。

「どうしたの?」
「お、お主はマナと呼ばれておるが、わしもそう呼んでよいかの?」

 恐る恐るケルンは尋ねた。

 マナはそれを聞いて、おかしそうに笑う。

「いいよー。ってか、逆にマナって呼んでほしいくらいだし」
「そ、そうか良かったのじゃ! これからはマナと呼ぶのじゃ!」

 ケルンは表情をほころばせ喜んだ。

「では、わしもケルン以外の呼ぶのじゃ」
「え? 別に呼びやすいしそのままでいいと思うけど」
「お互いあだ名で呼び合った方が、中がいい感じがするのじゃ! 何か考えてくれ!」
「うーん、そう言われても……」

 マナが考えていると、

「コラ! マナ様に近付くな!」

 ハピーが、飛んできてマナとケルンを引き離した。

「何をするのじゃ!」
「それはこちらのセリフだ。マナ様から少し目を離した隙に近付くとは卑怯な奴だ。人さらいが同行するだけでも我慢ならんのに、マナ様に近付くことはまかりならん」
「いや、別にいいから。少なくともアンタよりは安全だから」

 呆れた表情で、マナはハピーの暴走を止めようとする。

 ハピーはマナを連れ去ったケルンに、強い敵対心を抱いていた。

「確かにわしはマナを攫ったが、今はマナは大事な存在じゃ。危害など加えるはずはないわい」
「信用できんな」
「本当の事じゃ。わしのマナを思う気持ちは、お主にもほかの誰にも負けないくらい強い」
「な、なんだと?」

 ケルンの言葉はハピーにとって聞き捨てならなかった。

「この私を差し置いて、そんな言葉を放つか。一番は私に決まっている」
「そんなことはない。わしが一番じゃ」

 二人は睨み合う。

 マナはくだらないことで言い合うなと、呆れていた。

「私はマナ様をもう数年前から知っている。立った数日前に会ったばかりのお前では相手にならん」
「時間など関係あるか。わしはマナの愛らしい姿を撮った写し絵を家宝とすることに決めたのじゃ。わしが一番であるのは明白である」
「う、写し絵って何? くれ!」
「いいだろ。絶対にくれてやらんぞ」

 勝ち誇るケルンを悔しそうに睨み付ける。

「ふ、ふん。写し絵などいらない。私はマナ様とずっと一緒にいた。こっそりマナ様のお姿を拝見もしていた。この目に鮮明にマナ様の姿は残っているから、わざわざそんな物いらない」
「くっ……負け惜しみじゃな……」

 ケルンはあくまで強気な発言をするのだが、マナとずっと一緒にいれる状態にあったハピーを羨んだ。

「二人ともいい加減にしなさい」

 マナが喧嘩を止めに入ると、大人しく従って口喧嘩をやめた。

「それとケルン。写し絵って何?」
「え? そ、それはあれじゃ。魔道具でお主の姿を鮮明にとっていたのだ」
「アタシがそれ許可した?」
「し、してないが」
「金輪際、アタシが許可を出さずに、その写し絵を取ることを禁じます」
「な、何じゃと!? 最近の一番の楽しみじゃったのに!」

 魔写具を使う事を禁じられ、ケルンは大きなショックを受ける。

「当然です。マナ様の姿を写しとるなど、不敬すぎる行為です」
「アンタは、アタシの覗き見ること禁止」
「な、何ですと!? 数年前からの日々の日課なんですよ!? 一日の活力をそれで得てるのです……禁止にだけは」
「うん、気持ち悪いから絶対禁止
「ガーン!!」

 まるでこの世の終わりが訪れたかのような表情をハピーは浮かべていた。

 それからしばらく行軍を続け、一向は荒野に到着する。

「ここまでくれば、もうポーラハム神殿に到着するぞ」

 マナはだいぶ体力を消耗していたので、ハピーに抱えらていた。
 抱える役でまたケルンと喧嘩が勃発しかけたが、そもそもケルンは筋力と体力がなく、自分だけで精いっぱいだったので、ハピーがやるしかなかった。

(……ここ懐かしい)

 マナは荒野を見てそう思った。
 はっきりとは覚えていないが、確実にここには着たことがあるとマナは思った。

(やはりここには記憶を取り戻す鍵がある)

 マナは確信した。

「それじゃあ行きましょう。ポーラハム神殿へ」

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