ポーラハム神殿。
草木の生えていない荒野の真ん中に、ポツンと立っている寂しげな神殿である。
そこに飛王エマが数十人の部下を伴って訪れていた。
「……ここもだいぶ変わったが、神殿だけは変わらないな」
エマは懐かしむように呟いた。
神殿にエマは向かって歩く。
すると、見えない壁が出現し、侵入を拒まれた。
「……結界か」
エマは神殿の結界を破壊するため、剣を振るった。
ズガァアアン!! という凄まじい音が鳴り響き、結界にひびが入る。
しかし、壊れるまでには至らず。
結界は修復しもとに戻った。
一度駄目だっただけで、諦めることはなく、もう一度エマは剣を振るおうとする。
すると、野太い声が神殿から聞こえてきた。
「やはり来たか。エマよ。残念ながら今のお前を神殿に入れるわけにはいかん」
ポーラハム神殿の中から、土で出来た生物が出てくる。
神殿を守る土の精霊である。
「……ドンダか。お前が私を入れようとするかしないかなど、関係はない。何があろうと私は神殿に入る」
「させぬよ」
ドンダと呼ばれた土の精霊は、呪文を唱え始めた。
すると、周囲の地面に無数の穴が出現、その中から黄土でできた人形が大量に出てきた。
その人形は武装しており、エマや兵士たちを一斉に攻撃し始めた
エマは目にも止まらぬスピードで動き、土人形たちを蹴散らしていく。
「私を止めようなどと無駄なことだ」
「今のは序の口だ。わしを見くびるでない」
飛王エマと、土の精霊ドンダの争いが始まった
〇
早速ルルット城ではポーラハム神殿向かう準備を始めた。
それほど大軍を今すぐ動かすことは不可能なので、精鋭を集めて出撃することに。
あまり戦いの得意でないケルンは、作戦を考えてあとは家臣に任せるというスタイルであるのだが、彼女も珍しく出陣した。
突如出陣することになり、家臣たちは戸惑っていたのだが、元々ケルンは内心は反飛王的な立場にいるので、これを機にジェードランと協力をして飛王を討つのかということで、それほど大きな反発はなかった。
ルルット城から出陣し、それからバルスト城へと向かう
なるべく早くポーラハム神殿に行かなければならないため、かなり急いで行軍し、予定日より五日早くバルスト城へと到着した。
ジェードランは戻ってから、早速兵の準備をさせた。
「ジェードラン様……飛王を討つのですか?」
「それは状況次第だが……ポーラハム神殿を略奪していた場合、討つことになるだろう」
「可能ですか?」
カフスは以前飛王と相対したときの、絶対的な力の差を鮮明に思い出し、勝つのは難しいだろうと思っていた。
「今回はルルット城の精鋭も来ている。負けるとは限らない。どの道、マナが行くというのなら行くしかあるまい」
「……そうですね」
「今回はお前も来い。城の運営は不安ではあるが、ほかの者に任せよう」
「かしこまりました」
ルルット城の兵が味方したぐらいで、勝てる相手なのか大きな疑問があったが、それでも二人は覚悟を決めていた。
「ところでマナ様は、なぜポーラハム神殿に行きたがっているのでしょうか?」
「さあ、誰も尋ねていないし、本人の口からも聞いていないしな。まあ、理由などどうでもよい。行きたいというのなら、連れていってやればいいのだ」
心の底ではジェードランも理由は気になっていたが、自分から話してこないのなら、無理聞くこともないと思っていた。
バルスト城でも、いきなり大軍を動かすことは出来ないので、ルルット城と同じく精鋭だけが出陣することになった。
総勢千名ほどで、ポーラハム神殿を目指すことになった。
「ポーラハム神殿はここバルスト城から南東にある。十日ほど歩けば到着するじゃろう」
ケルンが地図を見ながら、ポーラハム神殿のある場所を説明した。
食料の準備は出来ているので、問題なくポーラハム神殿まで行軍することは可能である。
兵の総指揮はジェードランが担当することになった。
ケルンは自分がやると主張したが、マナがジェードランに任せたいというと、渋々従った。
「それでは、出陣する!」
ジェードランの指揮で、ポーラハム神殿に向けて出陣した。
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