(さて、気持ちを切り替えて、記憶を取り戻そう。そう言えば、エマが来るってことで有耶無耶なってたけど、アタシは神殿について調べようとしていたんだ。早速ジェードランに聞こう)
部屋に来ていたジェードランたちが、執務室に戻ろうとしていたので、マナ「待って」と呼び止めた。
「何だ?」
「聞きたかったことがあるんだけど、この国の神殿に詳しかったりする?」
「神殿? なぜそんなことが聞きたい?」
「ちょっと事情があって……」
「どんな事情だ?」
「え、えーと……」
前世の記憶を取り戻すと言っても、納得はされないだろうから、マナは良さげな理由を考える。だが、思いつかない。
そんなマナを見たジェードランは、
「言いたくないなら言わなくてもいい……」
話したくなさそうなのを察してそう言った。
「ただ、俺はどっちみち神殿に関してはよく知らん。有名な場所は知っているが」
ならハピーと同じじゃんと、マナは内心がっかりする。
「詳しい人は知ってる?」
「この城は武闘派が多いからな。知識のあるやつでも、神殿まで知ってそうなほど、知恵が豊富な奴は聞いたことが無い」
「そっかー……」
マナが落ち込んでいるのを見て、ジェードランは少し慌てる。
「ま、待て、確かにこの城には知っている者がいないだろうが、この城には書物室がある。そこで情報を得られるかもしれん」
「書物室……それなら確かにあるかも……よし、じゃあそこで探してみよう!」
落ち込んだマナだったが、有力な情報を得られて瞬く間に元気を取り戻した。
「私も一緒に探します!」
「探すのは人手が多いほうがいいでしょうから、俺も手伝いますよ」
「暇だし俺も手伝おう」
三人がそう言った。ジェードランは実際は訓練をしなくてはいけないのだが、それをやめて書物室の探索を手伝う事に決めた。
「ありがとう、じゃあ、早速案内して!」
ジェードランの案内で、書物室に向かう。
階段を下って一階へ。
西側に書物室はあった。四人は中に入る。
マナは入った瞬間、これは見つかりそうにないと思った。
少ないのだ。書物の数が。
ぱっと見、三百冊程度しかない。
(こ、この少ない本の中に、神殿について書かれた本ってあるかな? 地図みたいのはあるかもだけど……そういうのって有名な奴しか載ってないよね……)
かなり希望は薄かったが、捜索をスタート。
ありそうかなさそうかを判断するだけなので、二時間ほどで捜索は終了。
結論から言うと見つからなかった。
予想していた通り、周辺の地形が書かれた書物は存在していたが、そこには有名な神殿の情報しか書いていなかった。いずれもハピーに聞いた神殿である。
一度希望を持っただけに、がっかり感は前よりも大きかった。
「この城にないなら、ほかの城に行って書物を見させてもらうしかないだろうな……ただ簡単に部外者に本を読ませてはくれないだろう」
ジェードランがそう提案する。
「ほかの城ってどこ?」
「ルルット城がこの国では一番書物を集めている城だろう。城主のケルンが知識を重要にするもので、色んな書物を集めさせているというからな」
「そこに行くことって出来る?」
「俺はケルンと個人的な付き合いはない。書庫には大切な情報を載せているから、信頼関係を築いていなければ、見せてもらう事は不可能だろうな」
信頼関係と言われてマナは一つ作戦を思いついた。
そのケルンという城主を魅了して、書庫に入らせてもらう作戦だ。
その作戦を実行するために、マナはジェードランにお願いをした。
「そのケルンって人と会いたいんだけど、お願いできないかな?」
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