「止まれ」
キング・ライドスのまえに姿を現して、ベラムスはそういった。
キング・ライドスはただでさえ大きなオークより、頭三つくらい大きい。
通常のオークは金棒を装備しているが、キング・ライドスは背中に大剣を背負っている。
「ア? 止まレ?」
小さなベラムスが見えていないようだ。キング・ライドスはどこから声が聞こえてきたのか探す。そして、下を向き、
「ア? なんだこの小さいのハ。さっきの声はこいつが出したのカ」
ベラムスを発見する。
「ニンゲンではないですカ?」
後ろにいるオークのひとりがベラムスを見てそう言った。
キング・ライドスの後ろには沢山のオークたちが付いてきていた。
「ニンゲン? ニンゲンは確かにちっこいが、ここまでちっこかったのカ。マアどうでもいイ。おい、そこのニンゲン。今はテメーにかまっている暇はネェ。踏み潰されたくなければさっさとどケ」
キング・ライドスは、ベラムスのことを心底なめきっているようだった。
あまりにも体格差があるため、当然ではある。
「お前たちはゴブリンの村に行くつもりだな?」
「アァ? ナゼ知っていやがるテメェ」
「やめておけと警告する。いま戻れば、痛い目に遭わずにすむだろう」
ベラムスはそういった
彼はなんの話も警告もせず、いきなり戦いを仕掛けるのは野蛮だと思っていた。
そのため聞く耳があるとも思えないが、一応警告しておいた。
「ハハハ、痛い目? テメェみてぇなチビガ? ナニをするってんだ?」
最初キング・ライドスは、笑っていたのだが、
「オレサマハ、なめられるのガ、いちばん嫌いなんだよチビ。ぶっ殺してやル」
突如、表情を変えて凄みをきかせた。
ベラムスは表情を全く変えず、
「戻らないということでいいか。なら仕方ないな」
そう言った。
キング・ライドスは背負っていた大剣に手をかける。
剣と言うより鉄の塊といったほうが、正しく思えるような剣だ。
斬るのではなく、叩き潰すための剣だろう。
剣を一気に振り下ろして、ベラムスを叩き潰そうとする……が。
その剣が振り下ろされることはなかった。
「ライトアロー」
ベラムスがそういった瞬間、閃光が走った。
”ライトアロー”、光の矢を放ち相手を攻撃する魔法だ。
ものすごい速度で矢が、キング・ライドスまで、一直線に飛んでいく。
キング・ライドスはピクリとも反応できない。あっさりと心臓の位置に矢が命中。キング・ライドスの胸に風穴が開いた。
あまりに一瞬のできごとで、攻撃を受けた本人も、周りのオークも「エ?」としかいえない。
その後、おびただしい量の血が、キング・ライドスの胸から噴き出す。
そして、後ろに倒れた。
血が地面に広がる。
自分がなぜ死んだのか理解できぬまま、キング・ライドスは絶命した。