通常の生物と魔物と呼ばれる生物の違いは、進化するか否かで分けられる。
進化をするたびに魔物は強力になり、何度も進化した魔物は、時に災害を引き起こすほど強大な力を持つようになる。
進化をするためには特定の条件を満たす必要がある。
いろんな条件があるが、基本的に、ほかの魔物を食べることが条件になっている。
魔物を食べると言っても、なんでもいいわけではない。魔物によって、どの魔物を食べれば進化できるかが決まっている。
決まっている魔物は一種類だけでなく複数種ある。
その決まっている魔物を全部食べる必要はなく、選択して一種類の魔物を食べれば進化できる。
ちなみにゴブリンも魔物を食べることが、進化の条件だ。
食べることが進化条件になっている魔物は、比較的進化しやすい。だが、ゴブリンは進化しにくかった。
特にフラーゼス大森林に住んでいるゴブリンは、滅多に進化することがない。
理由はフラーゼス大森林に、食べればゴブリンが進化できる魔物が少ないからだ。
さらにその数少ない魔物も、めちゃくちゃ強くて倒すのが不可能だったり、強力な毒を持っていたりして、食うことが不可能だったりする。
だが、”アロースパイダー”という魔物は、食べることでゴブリンが進化することのできる魔物で、フラーゼス大森林に住んでおり、食べれて、それほど強くもない。
ただ、アロースパイダーは大きな蜘蛛の魔物で、パッと見、食べれなさそうだ。
実際食べたらかなりまずく、わざわざ狩ってまで食べるゴブリンはいなかった。
ちなみにどの魔物が何を食べれば進化できるか、ベラムスはだいたい知っている。
前世では魔物学なるものがあり、魔物を専門的に調べているものがいた。
そのものが作った研究資料を見て、覚えたのである。
今回ベラムスはアロースパイダーを狩ってきて、ゴブリンに食べさせ進化させるつもりだ。
味は調理次第で、かなりまずいから一応食べれるくらいの味にはなる。
ベラムスは狩りに行くまえに、ホブゴブリンに進化したいか、村のゴブリンたちに尋ねた。
「村の皆をホブゴブリンに進化させたいと思っているのだが、どうだろうか?」
「ホブゴブリン?」
「シンカ?」
どうやら進化についてあまりよくわかっていないみたいだ。
ベラムスは具体的に説明した。
「ハー魔物食べると強くなれるのカ」
「でも、アロースパイダーって……食えるのカ?」
「進化したら魔法使えるようになるなラ、進化してみたいナ」
ホブゴブリンに進化した場合、魔法を使えるようになるとも説明した。
「ハイハイハイ! アタシシンカする! マホウ使えるようになりたイ!」
デラロサが元気よく言った。
そういえば進化には年齢制限があったな、とベラムスは思い出した。
年齢制限は五歳だ。五歳以下のゴブリンは進化できない。
デラロサは七歳なので進化可能だった。
「魔法使えるようにはオレもなりたいナ」
「ベラムスが最近いろいろしてくれるかラ、手助けできるようになれたらいいナ」
ゴブリンたちは、魔法にだいぶ興味を持っているようだ。
進化することに抵抗を示したものはいなかったため、ベラムスはさっそく、アロースパイダーを狩りに行った。