14話 改築
「魔法で丈夫な家を建てれるのだが、どうしたい?」
改築を開始するまえに、ベラムスは村のゴブリンたちを集めて新しい家が欲しいかを聞いた。
「家?」
「魔法で家が作れるのカ?」
「ああ、今の家よりだいぶ丈夫になることを保障しよう」
「作れるなラ、作ってほしいナ」
「ウン、今の家なんかすぐ壊れそうだシ。雨は防ぎきれてないシ。床はギシギシするシ」
皆、今の家には結構不満があるみたいだ。
全員が新しい家が欲しいと言った。
家を作るまえに、ベラムスはオークの砦に向かって、オークたちを連れてくる。
オークたちを連れてきた理由は、建築のためではなく、近くの木を切って、使える土地を増やすためだ。
オークの砦に斧があったので、持ってこさせた。
オークたちは力が強いため簡単に木を切っていく。
ただ、これだけの量のオークたちが住める家は、ゴブリンの村にはないため、オークの砦に帰らせる必要がある。
オークの砦から、ゴブリンの村までは結構かかるので、作業時間はあまり多くない。
早いうちにオークが住める家を作る必要がある。
ちなみに食料はオークのほうにたくわえが結構あったので、しばらくは問題なさそうだ。
改築だが、実際は改築と言うより、一から作り直すことになりそうだ。
家は結構傷んでいるし、元々しっかりした作りではない。
改築の方法は、土属性の魔法を使う。
家を作るための魔法、と言っても差し支えのない"マジックハウス"という魔法がある。
ベラムスが前世で、簡単に家を作れるようにして欲しい、と言われて開発した魔法だ。
かなり丈夫な石造りの家を簡単に作ることが出来るのだが、消費魔力がものすごく多い。
結局、魔力を多く持っているものしか作ることができず、あまり一般には普及しなかった。
ベラムスからしたら、失敗したと思った魔法である。
(ただ、今回は作っておいてよかったな。現在の魔力では一日一軒家を作ることができるか)
ベラムスは、家づくりを開始する。
最初に元の家を取り壊す必要がある。
なるべく家を建てることと、メルーンへの水やりと成長速度上昇魔法以外で、魔力を消費したくないと考えたベラムスは、家の取り壊しもオークたちにやってもらうことにした。
あまりしっかりした家では無いので、取り壊しは簡単に終わる。
取り壊したのち、マジックハウスの魔法を使用。
まずは土台を作成。
土台を作ったあと、その上に綺麗に均等に切られたブロック石が、崩れにくいよう積み上げられていく。
ここの工程は難しく、少しでも集中力が乱れると、家がもろくなってしまう。
そのため、ベラムスは細心の注意を払って魔法を使う。
積み上げて壁が完成。
その後、屋根を作って、扉を作って、
「できた」
一回作るのに二時間ほどを要したが、無事完成した。
石で作られた立派な家だ。
家が作られていくようすを見ていたゴブリンたちは、
「すごいな魔法ッテ」「家がこんなにすぐ出来タ」「すごくいい家じゃないカ、オレの家も作ってくれベラムス!」
と感心しきっていた。
翌日からも同じように家を建てていく。
家は全部で10軒建てた。
その後、住宅以外の食料庫や資材置き場などの建造物も建てる。
「何カ、今までとはまったく別の村になったナー」
「十日間くらいなのニ」
十日くらいかけて全部建て終わると、だいぶ本格的な町のような感じになった。
ゴブリンたちはあまりの変貌振りに若干戸惑っているようだ。
その後、オークたちがある程度木を切って、使える土地が増えたので、そこにオーク用の家をいくつか建てた。
オークたちは全部で二十八体いる。
建てた家は4つ。オークはデカイので、かなり狭いみたいだ。
もうちょっと土地が広がったら、追加で家を建てる予定だった。
ちょうど建築が終わったころ、メルーンの実が食べれるようになるまで熟した。
「本当に食べれるのカ?」
「大丈夫と言っただろう」
ベラムスはメルーンを収穫する。そして、まずアレサとデラロサに食べさせようとしていた。
アレサはだいぶ食べるのを躊躇しているが、
「いただきマース」
デラロサはまるで躊躇せず、メルーンにかぶりついた。
「オイシイー」
「ほ、本当カ? 体がしびれたりしてこないカ?」
「ウン、全然へいキー」
デラロサがまったく平気そうにする姿を見て、アレサも恐る恐るメルーンを食べる。
「ウ、ウマイ!」
アレサは自分で食べてみて、何も起こらず安心する。
その後、おいしそうに食べた。
ほかのゴブリンたちも最初は躊躇していたが、最終的に皆うまそうに食べていた。
いくつかあまったので、食料庫にいれ、腐らないよう腐敗防止の魔法をかける。
そして、再び畑にメルーンの種をまいた。
次は村の防衛能力を強化したいとベラムスは考えていた。
武器を作成したり、防壁を作成したりといろいろやることはあるが、まず最初にゴブリンたちを進化させることに決めた。