次の日。
村のゴブリンたちは、特にベラムスに対する接しかたを変えたりせず、気さくに接していた。
ただ、魔法が使える理由についてはだいぶ質問されていた。
ベラムスは、人間は成長が早いと言って誤魔化す。
ゴブリンたちはあまり人間には詳しくないので、割と簡単に誤魔化しきれた。
接し方は変わらないが、ただの子供ではないとは理解してもらえただろう。
その後ベラムスは、村長の家に行く。
目的は以前から考えていた、ゴブリンの生活環境などを改善するため、村の改築を行う許可をもらうためだ。
「それデ、話とは何ジャ」
村長は座りながらベラムスの話を聞いた。
「まず、私が普通の五歳児ではないとはわかってもらえたか?」
「そりゃあ、普通の五歳児がオークのボスを倒すことはできんじゃろうからナ。ゴブリンの常識で考えれバ、普通ではないのウ」
「私はこう見えて、いろいろな魔法を操ることができ、多くの知識を保有している。私はその知識と魔法を使い、この村の生活環境および防衛能力を改善したいと思っている。その許可をもらいに来たのだが」
「生活環境と防衛能力の改善……具体的になにをするきなのジャ?」
「まずは、農業だな。この村に安定した食料を供給できるようにしたい」
「農業カ……ニンゲンの技術じゃナ」
「それから、家の改築、服の改良、村の周りに防壁を作る、武器の強化、ゴブリンたちの進化などだ」
ベラムスは村の改築案を次から次に挙げていく。
村長は、
「それだけやれバ、ニンゲンの町みたいになるのウ」
と昔を懐かしむような目で言った。
村長は昔、人間の町を見たことがあるみたいだった。
「ワシは今のこの村も嫌いではないのじゃガ、おぬしがこの村をよりよくするためニ、働いてくれるというのなら断る理由もあるまいテ。今回のオークの件デ、この森は生ぬるい場所ではなかったことを思い出したしのウ。この辺はここ十年間、平和じゃったガ、この森の環境は少しのあいだデ、激変する事もあル……」
もう一度、村長は昔の出来事を思い出しているようだ。
今度は何か恐ろしい出来事を思い出すような目だ。
「では、やるとしよう。ゴブリンたちが住みやすい環境を必ず作ると、約束しよう」
「アア、頑張るのじゃゾ」
「それと、私ひとりでは、作業量的にきつい部分もあるため、村のゴブリンたちにも協力をお願いしたいが、大丈夫か?」
「それハ、村のものたちに聞くがよイ。マア、ベラムスの頼みを断るものはおらんとおもうゾ」
「そうか」
「ワシにも出来ることがあったらラ、何でもいうてくレ。見ての通り老体じゃかラ、力仕事は出来んがノ」
「村長を働かせられんよ。ゆっくりしながら、村が変わるようすを眺めておいてくれ」
「ホッホッホ。そうさせてもらうかノ。楽しみがひとつ増えたわイ」
ベラムスは村長の家を出て、作業をさっそく開始した。