リーチェがBBCアジトで奴隷になってから、2日ほどたった。
2日目からは採掘に参加させられた。
やり方を見てある程度覚えた為、何とか爆死はせずに済んではいた。だが、あまりの重労働に疲労困憊し、リーチェは2日で早くも心が折れそうになっていた。
疲れは体だけではない。自分が爆死するという恐怖と戦いながら作業をしなくてはいけないので、ジリジリと心の方も疲弊していった。
奴隷達が何も文句を言わずに従っていたのは、恐れからだったと思っていたが違うようだ。疲労していれば文句を言う気力もなかったからだと、リーチェは実際に作業を行って身にしみて感じた。
現在、牢屋にてリーチェは、ぐったりとしていた。
早く皆の所へ帰りたい。ペペロン様早く助けに来て。2日目にしてだいぶ心が折れそうになっていた。
「しんどそうだなー」
そんなリーチェに、パナがのんきそうに声をかけた。
パナはまったく疲れているようすはない。彼女が体力があるからではない。パナはペルストから、爆死させるのはおしい奴隷と見られ始めていたため、ここ最近、採掘の労働をしていなかった。
そのため、リーチェとは違い全然きつそうにしてなかった。
リーチェはそんなパナを、殺意すらこもってそうな目つきで睨みつける。
「おおー怖ー」
パナはその目を見て軽い調子でそう言った。その態度が、さらにリーチェをイラつかせる。
正直言って、リーチェはパナをかなり嫌っていた。
理由は複数あるが、一番気に入らない点は、とにかくBBCの連中に媚びて媚びて媚びまくっている所だ。
ペルストの言う事に、パナは絶対に逆らわない。元々採掘作業を一緒にしていた仲間たちに、平気で鞭を振るったりする。
今はまだリーチェと同じ牢屋に入れられているが、もう少ししたらもっといい部屋に入れると、嬉しそうな表情でパナは語っていた。
(なんで自分も連れ去れてこられた立場なのに、あんな連中にここまで媚を売れるの?)
リーチェはパナに憤りを覚えていた。
ただ、憤っているからといって、それでパナを咎めたりはしていなかった。というより出来なかった。とにかく体力を消耗していたため、現在のリーチェには、恨みをこもった目つきで睨みつける以上のことは出来なかった。
その後、飯が運ばれてくる。リーチェの食べ物は非常に粗末なものだ。パン一切れとそれに塗るバター。かなり量は少ない。この程度で腹が膨れるはずは無く、リーチェは常に空腹状態だった。
だが、パナの料理は少しパンの量が多く、小人の体には十分な量の食事を取っているように思えた。その事もリーチェをさらにいらつかせる。
そして、飯を食べた後、
「明日も早いし、そろそろ寝るか」
と言ってパナは寝た。
リーチェも眠りにつく。
ぐーぐー腹がなる音が聞こえる。空腹で眠れない。しかし、寝ないと明日の仕事がさらに地獄になる。
なんとか寝ようと頑張っていると、
ガチャガチャ。
そんな音が聞こえてきた。
パナが寝ている場所から聞こえて来る。
(なに……?)
リーチェは疑問に思うも、疲れで頭が回りにくくなっていたので最初は無視しようとした。
だが、結構続いたので、音がかなり煩わしく感じてきて、パナを咎めようとそちらを向く。
牢の中は薄暗くてよく見えない。だが、パナが何かゴチャゴチャやっているのは分かった。
すると今度は、ドンッ! と何かが落ちたような音がした。
その直後、パナが歩き出すような音が聞こえてきた。
「え!?」
驚いてリーチェは思わず声を出した。パナにも足にかせがつけられているから、動く事など不可能はずだ。
「やっと出れるぜ。このクソみたいな場所から」
パナはそう呟きながら歩いていた。
「ちょ、あ、あんたどうやったのよ」
「ピッキングしたんだよ。昔からの特技なんでねこれが。これから牢もピッキングして出て、ここから出るつもりだ」
「あ、あんた、BBCの連中に従ってたんじゃあ……」
「あんなん演技に決まってるだろ。誰があんなクソ共に従うかってんだ。従順な振りをして、可愛がられるようになれば、色んな所についていっていたら、アジトの内部構造をペラペラ喋ってくれたりするからな。ちなみにピッキングの道具はペルストからこっそりくすねてきた。これでようやく出られるぜ」
どうやらパナは、従った振りをしてアジトからの脱出を画策していたみたいだった。
その後、牢の鍵をピックングしようとする。
「ちょ、ちょっと! 私の枷も解いてよ!」
「何で」
「何でって、出たいからよ!」
「お前私のこと嫌ってるだろ? 一緒に出たくはないんじゃないか?」
「そ、それはあんたが、ただただ純粋に従っていると思ってたからで……従った振りをしているなんて思っていなかったし……」
「はぁー。まあ別にいいけど。お前を出しても足手まといになるだろ。仕事で疲れてろくに動けないだろ」
「た、確かに疲れてるけど、動けないってほどじゃないわ! それに私は結構身体能力高いし、剣術とかも得意だし、結構使えるわよ!」
「ここに剣なんてねーぞ」
「う……剣がなくても動けるから……私が外に出て、ペペロン様にここの居場所を教えて、潰して貰わないといけないから、お願い私の枷も解いて」
リーチェは真剣な眼差しで、パナにお願いした。
「……囮くらいには使えるかもしれねーな。アジトにはゴーレムがうようよいて、簡単には出られねーって話だしな」
「囮……ま、まあ出してくれるならなんでもいいわ」
「そうかい。じゃあ解いてやるよ」
パナはガチャガチャと、リーチェの枷をピッキングし始めた。しばらくしてリーチェの枷を解くことに成功した。
「1つ忠告しておくが、私の指示には必ず従え。このアジトについては、お前より遥かに私の方が詳しい。勝手な行動は絶対に取るな」
「分かったわ」
リーチェは頷きながらそう返答した。
その後、パナは牢の鍵のピックングを始める。
枷を解くときよりかは少し時間を要したが、ピッキングに成功した。
「じゃあ行くぞ。遅れるなよ」
「うん」
こうして2人のアジト脱走作戦が始まった。
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