一緒に倒すか。
率直に、悪くない提案だと俺は、
「いいんじゃないか?」
と返答した。
「ふむ、なるほど。いいとは思うのじゃが、いかんせんわしはテツヤの強さを知らんからのう」
「強いって言ってるのににゃ~」
「どのくらい強いかが、分からんと言うておるのじゃ。そうじゃ、ステータスを見せてくれんかのう?」
ステータスってあれ人に見せることが可能なのか。
まあ、板で出てくるからな。見ようと思えば見せられるか。
俺は「ステータスオープン」と言って見せた。ちなみに今のステータスは、
名前 テツヤ・タカハシ
年齢 25
レベル 1/1
HP 159/159
MP 40/69
攻撃力 62
防御力 114
速さ 73
スキルポイント 10
スキル【死体吸収】【鑑定Lv2】【隕石Lv3】【強酸弾Lv2】【雷撃Lv2】【吸い取り糸Lv1】
耐性 【毒耐性Lv2】【雷耐性Lv1】
こんな感じだ。
メクは俺のステータスを見て、
「……な、なんじゃこのステータスは……?」
と驚愕している。
「レベル1なのに、ステータスがどれも高水準。防御力にいたっては100を超えておるとは……スキルも通常人間が習得不可能な技もいくつも持っておる。【死体吸収】というスキルにいたっては、聞いたことすらない」
「うわすごいにゃ! どれもアタシの倍以上のステータスだにゃ~……でも、レベル1ってどうしてにゃんだろ?」
メクは戸惑いながら呟き、レーニャは感心したあと、レベル1というのに疑問を持っている。
やはりこの世界の常識的に、レベル1でこのステータスというのは、かなりおかしいらしい。
そして【死体吸収】は、珍しいスキルのようだ。
「お主、何者だ?」
「いや……その。【死体吸収】ってスキルがあるでしょ。最初からこれもっててさ、これが結構使えるスキルで……」
俺は【死体吸収】の説明を行った。
「死体の能力を吸収すると……な。まったく聞いた事の無い能力じゃな」
「で、どう? 倒せそう?」
「飛び抜けて防御が高いから、敵の攻撃はだいぶ防げるじゃろう。素早さも問題のない数字じゃ。若干攻撃に不安があるのう。敵は固いからな。まあ、抜け道にはいろんな魔物がおる。倒して、お主のスキルで吸収していけば、強くなれるじゃろうし。レーニャと共闘すれば倒せるくらいにはなるじゃろう」
今のままでは倒せないかもしれないが、強化すれば倒せるようになれるか。
「じゃあ、倒せるのにゃん? やったにゃん! やっとここから出れるにゃん!」
レーニャは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。
よほど出られそうな事が嬉しいみたいだ。
まあ、この谷にずっといるなんて、正直いやだよな。
どのくらい、いたかは分からないけど、この部屋の感じを見ると一週間やそこらじゃなさそうだし。
「まだ出られると決まってはおらんがのう。というよりお主が途中でやられないかが心配じゃ。もうちょっと強くなってから行った方がよいかもしれんぞ?」
メクはレーニャにそう言った。
「えー! 出れるにゃら今すぐ出るにゃ! アタシもちょっとは強くなったにゃ! 今日やられたのはちょっと油断しちゃったからにゃ!」」
レーニャは反発する。
俺としても早く出れることなら出たいな。
「そうかの。まあ、わしも早く出たいしな。じゃあ、行くのはさっそく明日にするがよいか?」
「大丈夫だ」
「行くにゃー」
明日、谷の抜け道に行くことに決定した。
そのあと、ご飯をごちそうになった。
魔物の肉をとってあるらしく、簡単な火の魔法をレーニャは使えるので、その肉を焼いて食べた。
ぬいぐるみ状態のメクは食べる必要がないらしく、何も食べていなかった。
ちなみに魔法はスキルとは少し違うものらしい。
スキルはスキルポイントを使って、習得しないと使えないが、魔法は呪文さえ唱えれば誰でも使える。
ただし、使うために必要なMPが、スキルに比べて多いのだそうだ。
今回レーニャの使った魔法【小火】のように、弱い魔法はたいしてMPを消費せずに使える。
俺もいくつか、便利な魔法を教えてもらった。
その【小火(スモールファイア)】と、辺りを照らせる【小光】の二つを教えてもらった。
それと、呪文は、【小火】が「火よ」で、【小光】が「光よ」と非常に単純だ。さすがにこれならすぐ覚えられる。
飯を食べた後は、寝るのだが、
「にゃー……テツヤー……撫でて欲しいにゃ~」
とレーニャが頼んできた。
眠そうな表情をしている。
そして「うにゃー」といいながら、俺の近くにすり寄って来て、頭を差し出してきた。
俺は若干困る。
最初撫でたのは、猫を撫でるつもりで撫でていたから、一切抵抗がなく撫でれたが、やはり女の子の頭を撫でるというのは少し緊張するというか……
しかし、レーニャは、
「にゃー……撫でるにゃー」
と頼んできている。
困った俺は、何となくメクの方を見ている。
メクは何も言わずに、ジーと俺を見ていた。
これは、どうなんだ? 撫でろってことなの? 撫でるなってことなの?
「にゃ~、早く撫でるにゃ~」
レーニャがじれったそうに頭を押し付けてくる。
仕方ないここは撫でるしかない。
俺は意を決してレーニャの頭を撫でた。
俺はなるべく優しく、気を使いながら頭を撫でる。
レーニャは撫でられているときは、うにゃーと気持ち良さそうな声を出し、しばらくして寝息を立て始めた。
「だいぶ懐いているようじゃの」
ここで、メクが声をかけてきた。
「ただ、懐いているからと言って、変な事をするでないぞ。わしは眠らないでよい体だから、常に見張っておるからな」
「へ、変な事ってなんだ変な事って、するかそんなこと!」
「そうじゃのう。レーニャも悪い奴には懐かんじゃろうからの。お主がそんなことする奴には見えんが、念のためな」
妙な疑いをかけられて、ドキッとする。
実際、こんな年下の子にあれこれする気はない。というか、仮に歳が近くてもそんな度胸はない。
伊達に25年間、童貞をやってはいない。
「わしらも二年はこの谷におるが、遂に明日ここを出られるかのう」
二年もここにいるのか!? 俺は驚く。
俺なんて一日いただけでも、だいぶ嫌気が差してきたのに、二年もいたのか。
明日は絶対に、勝ってこの谷を出ないとな。
使命感みたいなものが俺の胸にわいてきた。
その後、眠気が襲ってきたので俺も寝た。
〇
翌日の早朝、俺達は家を出て抜け道に向かった。
先頭をメクがトコトコと歩いている。
道中、魔物が穴から出てきているのを発見。
魔物も死霊に襲われるらしく、夜になったら魔物達も本能的に巣穴などに隠れて、襲われないようにするという。
ちなみに出てきた魔物はゴブリンだった。
3体出たので倒して、死体吸収する。
HP15上昇、MP3上昇、攻撃力3上昇、防御力3上昇、速度3上昇、スキルポイント3獲得。
3体合わせてそれだけ上昇した。
「それが、死体吸収か」
「吸い込まれちゃったにゃー」
俺のスキルを初めて見て、驚くメクとレーニャ。
「それでどのくらいステータスは上がるのじゃ?」
「えーと」
俺は上がった数値を伝える。
「ゴブリン一体で1上がるのか。ゴブリンなんてこの谷を出れば山ほどいるから、倒して吸収しまくれば無敵になれるぞお主」
「そうなの?」
「普通、レベルの場合は弱い奴だけを倒していても、上がらんのじゃがな。その能力も、もしかしたらそのうち、弱い奴を吸収しても、一切ステータスが上がらなくなるかものう」
そういう制約が出来てくる可能性もあるか。
でも、ゴブリンだけ殺して強くなるって何かやだな。
俺、ゴブリンス○イヤーじゃねーし。
まあ、それが強くなるのに一番効率的なら、やるかもしれないけど。
「あとどれくらいで着くんだ?」
「もうすぐ着くぞ。中にはその辺に出てくる魔物より強い奴らが出るからな。気を引き締めるんじゃぞ」
そういわれて、俺は少し気を引き締めなおす。
「にゃーにゃー。テツヤは外に出たらなにがしたいにゃん?」
気を引き締めろと言われたが、お構い無しと言う感じのお気楽な調子で、レーニャが尋ねてきた。
外に出たら何がしたい……?
具体的には考えてなかったな。
とにかく生き残る。としか考えてなかったし。
冒険者になって稼ぎつつ生きるとか?
「アタシはおいしいものいっぱい食べるにゃん! 記憶がないから分からにゃいけど、外にはおいしいものがいっぱいあるって師匠から聞いたのにゃ」
レーニャは心底楽しみだというようすで言う。
「おいしいものか。それは俺も食べたいな。あのデカイきのこめちゃくちゃまずかったし」
「えー? テツヤきのこ食べちゃったのにゃん!? あれは食べるにゃって師匠が言ってのにゃ! 大丈夫なのにゃ!?」
「テツヤは毒耐性を持っておったし大丈夫じゃろう。それよりも気を引き締めろといったじゃろ。もう着くぞ?」
少し怒ったような口調で、メクが言う。
「師匠は外に出てやりたい事はないの?」
「当然、この呪いを解くのじゃ。一体何十年この体で過ごしてきたことか……いい加減、解く方法を見つけないといかん」
何十年って恐ろしい言葉が……
そんな長いあいだ、この体なのかメクは。
「お、着いた。ここが抜け道じゃ」
メクが示す先には大きな洞窟の入り口がある。
「この洞窟を抜ければ、出られるのか?」
「ああ、結構長いぞ。二日くらいはかかるかもな」
二日かかるのか。
「にゃー! 行くにゃー!」
レーニャが元気よく洞窟に入っていき、俺とメクもあとに続いた。
○
洞窟に入りしばらくして魔物に遭遇した。
ちなみにこの洞窟は、前の洞窟みたいに光るきのこがないので、【小光】を使って辺りを照らしながら進んでいる。
出現した魔物は、火で燃えているイタチみたいな奴だった。
背中の部分が激しく燃えている。こいつが一匹出てきた。
俺は鑑定を使いどんな魔物か調べる。
『フレイムウィーズル 10歳 29/36
炎を纏ったイタチの魔物』
レベルはそこそこ高い。
炎を纏ったイタチなのはみたまんまだな。
「うにゃー……熱いのきらいにゃ~……」
レーニャは怯えている。
「フレイムウィーズルか、少し厄介な奴が出てきたな。わしは打撃には強いが燃やされたら一巻の終わりじゃからな……」
ぬいぐるみだし、よく燃えそうだな……
俺は、まず【吸い取り糸】を使用。
糸を敵にくっつける。
が、くっついた瞬間燃えた。
……この糸、耐火性ゼロなのか。
敵が炎で攻撃をしてくる。
炎の玉が三発撃たれ、俺、レーニャ、メク、それぞれに飛んでいった。
若干隙が出来た俺は慌てて避ける。びっくりしたー。
レーニャは火が本能的に恐いのか、「にゃあ!」と叫びながら避けている。
火が当たるのがまずいと言っていたメクだが、一番冷静に避けていた。
動きも速い。ステータスが弱体化していると言っていたが、動きはかなり良さそうだ
俺は気を取り直して、攻撃を開始。
この洞窟は天井が高いので、【隕石】が使用できそうだ。
俺は【隕石】をフレイムウィーズルに落とす。
ずどーーん! と音を立てて命中した。
大ダメージを与えたみたいだが、まだもぞもぞと動いている。
俺はとどめに、近づいて頭を蹴り付けた。
蹴られたフレイムウィーズルは、ピクピクと少し動くがその後、ピタリと動かなくなった。
たぶん死んだかな?
俺は確認するため、近づいて触る。
そして吸収できるようなので吸収した。
HP30上昇、MP3上昇、攻撃力5上昇、防御力2上昇、速さ2上昇、スキルポイント2獲得
スキル【炎玉Lv.2】獲得。
耐性【炎耐性Lv.1】獲得。
「結構攻撃力上がった」
「ふむ、奴は攻撃力は高い魔物じゃからの。敵のステータスによって得られるポイントが、変動しておるのか」
それは俺もそう思っていた。
「うにゃー。何も出来なかったにゃ~……次はちゃんと戦うにゃ!」」
レーニャは悔しそうな表情で、そう宣言をした。
俺達はさらに洞窟の奥へと進んでいった。
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