第七話 ダンジョン強化
リックは冒険者を殺し1500DPを取得し、全部で1700DPになった。
まずはユーリに言われた通り、
500DPを使いダンジョンに新しい階を作った。
新しい階の作成は階を増やす毎に必要なDPが倍々で上がるようになっている。
最初なので一番安かった。
その後、魔物の卵、五個500DP、
合成セット2つ包丁の分を抜き500DP
残り200DPは取っておいた。
魔物の卵の中身は、
スライム、ゴボルド、ゴブリン、ゴブリンのGランク四体と、
ボブゴブリンFランク一体だった。
「やっぱ僕、運悪いよね……」
50%なはずのGランクが90%で出てきているから、
今の所は間違いなく運が悪い。
「だ、大丈夫なのです! ご主人様には合成があるのです! あ、ホラ! 色が変わりましたよ!」
リックは今、ゴブリンとゴボルドを合成していた所だった。
ちょうど壺の中の液体の色が変わり魔石を入れるタイミングになった。
「実はさっきのは奇跡みたいなもんで、僕には別に特別な力なんてないとかありえるかな」
そんな後ろ向きな事を言いながら、魔石を液体に入れた。
以前と同じようにぐるぐると液体が渦を巻き始め。
ボフッと音ともに煙が発生し、同時に壺がパリンと割れる。
煙が晴れて姿を現したのは……
巨大な二本の角が生えた。灰色の獣、
Aランクの魔物ベヒーモスが誕生した。
「ベヒーモス! やはりご主人様の力は本物だったのです!!」
「ベヒーモスかぁ……こいつには昔やられかけたなぁ……」
苦い思い出を思い出すリック。
「でも二回出来たなら偶然じゃ無いかなやっぱり、よし! 次も作ろう」
「はいなのです!」
今度はスライムとゴブリンを合成しようとする。
リックは最初ボブゴブリンを材料にするつもりだったが、
ボブゴブリンはそれなりに強く、
このままでも戦闘に使えるので、
今回は使わないことにした。
リックは手際よく合成を行い。
次に誕生したのは、
一本角が生えた食人鬼、
Bランクの魔物オーガが誕生した。
「あれ? オーガはBランクですのよね、絶対にAランクが出るわけでは無いのですか」
「Bランクでも十分おかしいけどね」
どうやらリックの行う合成では、
AランクだけでなくBランクも作られる可能性があるみたいだった。
「じゃあオーガちゃんとベヒーモスちゃんとボブゴブリンちゃんを配置するのです。残りのは合成用にとっておくべきなのです」
「そうだね」
リックはベヒーモスとボブゴブリンを二階、オーガを一階に配置した。
「後は冒険者が来るのを気長に待つだけなのです」
「来るかなぁ」
「今日はもう来ないと思うのです」
ユーリの言う通りいつまで経っても来ず。
暇な時間を過ごすことになった。
外の時間はわからないが、
リックは腹が減ったので食事をDPで作った。
DP節約のため簡単なパンを作って食べた。消費DPは10だ。
その後も来ない。
感覚としては今は夜で、
リックは若干眠くなってきた。
「来ないなーなんか眠くなってきたし寝るかー」
「ご主人様、眠いのですか?」
「うん、ユーリは眠く無いの?」
「精霊は眠ったりしないのです。ご主人様は眠くなるということは完全に精霊となってはいないみたいなのです」
「へーそうなんだ、精霊は眠らないんだ」
「ええ、ご主人様眠いのなら、私が見張っておくので安心して眠るのです」
「うん、そうするよ」
そう言って寝ようとした時、
ベッドが無いことに気付く。
「そう言えばベッド無かったどうしよう」
元々何も無い部屋にベッドなど無かった。
「ベッドは無いのです……DPで作ればいいのですが」
「僕は枕があれば多少床が硬くても寝られるから、枕だけ作ろう」
「枕ですか……」
リックがカタログを広げ枕と言おうとしたその時、
「待ってなのです!」
「ん?」
「枕にDPを払うのは勿体無いのです! 私を使うのです!」
「どういう意味?」
リックが尋ねると、ユーリは正座をして、
「さあ、どうぞなのです!」
そう言った。
「え……」
リックは最初、意図が読めずに戸惑うが、
これは膝枕で寝てくれという意味だと理解する。
「や、でも悪いし……」
「大丈夫なのです! ご主人様にならこの膝! いくら使ってもらっても構いません!」
ユーリはそう言いながら膝をパチパチと叩き、
リックに来るよう促す。
リックは躊躇しながらも、
そういうのならと膝枕させてもらうことにした。
ユーリは露出の大きい服を着ており、
太ももの辺りは地肌が露出している。
リックは肉付きのいい太腿を少し見つめた後、
意を決してユーリの膝に頭を降ろした。
(……う、これは……)
ムチムチした地肌が頭と頬に当たる。
柔らかいが程よい弾力のある感覚と
ほんのりと香るいい匂い。
まさに至福の感覚だった。
女体に慣れていないリックにとって初めて味わう感触だった。
「どうなのですかー?」
「え? あ? いや、うんいいんじゃない?」
思い切り慌てるリック、
リックは、眠かったのだが、
完全に目が覚めてしまった。
興奮してしまって眠れそうに無い。
人間じゃ無くなったらしいリックだが、
こんな所は人間のままだった。
「さあご主人様、安らかに眠るのです」
寝られないよ! とリックは心の中で全力で突っ込む。
ただ気持ちいいのは確かなので、やめるとも言えず。
結局寝たふりをしてしばらく過ごした。
〇
数日後。
人間の冒険者達がリックのダンジョンに侵入して来た。
「 こ主人様! 敵が来たのです!」
「!」
ユーリに言われ、リックは監視玉を確認する。
侵入して来た冒険者達は5名。
装備は低級でそこまでランクの高い冒険者では無い。
「F〜Eランクって所かな、あのレベル簡単に倒せるだろう」
リックは命令を出さない。
事前に侵入者が来たなら撃退しろと、命令を出していたからだ。
リックは強い冒険者が侵入して来た場合、一度命令を取り下げるつもりだった。
だが、この程度なら余裕で倒せるのでその必要は無かった。
数人の冒険者達は余裕な態度で部屋を歩いている。
あのくらいのレベルの冒険者は何度か簡単なダンジョンを攻略し、少し調子に乗り始めている傾向があった。
そしてサイクロプスがドシン! と音を立て歩き出す。
冒険者達は驚き戸惑う。
そしてあっさりとサイクロプスに叩きつぶされ、パーティーは全滅した。
「うわーグロい」
かなりショッキングな光景が映し出される。
その後、死体は吸収され跡形もなく消えた。
「えーと……全部で2500DPなのです!」
「おお」
人間は普通で200DPなので、普通より高かったみたいだ。
「この調子でバンバン集めるのです!」
「そうだなー」
次に来たのは人間では無く魔物だった。
ゴブリンとボブゴブリンの集団が入って来た。
住処を探して侵入して来たのかもしれない。
ゴブリンがサイクロプスに敵うはずも無い。
あっさりと叩き潰され死亡した。
ゴブリンは一体40DP、ボブゴブリンは80DP。
計480DPを獲得した。
そんな感じで何度か侵入者を撃退し、DPを稼いでいた。
リックの当面の目標はDPを貯めて、このダンジョンに錬金術の研究が出来る施設を作ることだ。
ただカタログを見ると、やはり質の良い錬金術の道具や材料はかなり高いことが多いため、
すぐには難しそうと言うのが現状だった。
「ぱんぱかぱ~ん! ご主人様おめでとうなのです! ダンジョンのランクがFに上がったのです!」
ユーリがハイテンションでそう言った。
「ランクが上がった?」
「そうなのです!」
「ちょっと待って、えーとランクってどうやってあがるの?」
「今まで獲得した累計DPに応じて上がるのです! GからFまでは10000DP必要なのです!」
「はぁ僕ダンジョンのランクって中にいる魔物の強さで上がると思っていたから、もうこのダンジョンはかなり高ランクになってると思ってたよ」
「魔物の強さはあまり関係ないのですが、余程運の良い者以外はGランクで強い魔物を獲得できないので、結果低ランクダンジョンの魔物はランクが低くなるのです」
へぇーとリックは頷く。
「ランクが上がったことでカタログが更新されるのです!」
「カタログが更新?」
「ランクに応じてDPで作れるものが増えるのです! まあGからFではたいした違いはないのです!」
ランクを上げると作れるものが増えるということは、錬金術の材料や道具ももっといいものが作れるようになるのかな? とリックは思うが、どっちにしろ今は作れないなと結論を出した。
「さて、溜まったポイントで、魔物を増やすべきなのです!」
とユーリが提案する。
リックはうーんと悩む。
(できれば貯めてたいんだよなぁ……)
悩むのだがリックも馬鹿ではない。
大分、冒険者を殺したので、恐らく街では大分噂にはなっているはずだと推測した。
(一人も逃がしてはいないので、詳細は分からないだろうけど、恐らくランクの低い出来立てのダンジョンだが、凶悪な魔物が居るみたいな噂が立っているはず)
そうなると高ランクの冒険者が連携を取りながら攻めてくる。
こんな街の近くにある危険なダンジョンが放って置かれる訳がない。
そうすると今の戦力だとひとたまりもない。
死んでしまっては研究も何もない。
魔物を作るのが最良の選択だとリックは判断した。
「分かった、魔物を作ろうか」
今あるDPは7000。
リックはまず魔物の卵を十個作り1000DP消費。
合成セット5、作り2500DP消費。
五体の魔物を作った。
アラクネ、Aランク。
サイクロプス2体目。
キングスライム、Aランク。
キマイラ、Bランク。
トレント、Bランク。
この五体が作られた。
「また大幅に強化されたのです! 残りのポイントも使うのです。階を増やすか、もしくは今ある階を魔物が有利に戦えるように改造するか、どっちかがいいと思うのです」
「うーんそうだね」
考えているとふと思った。
「このAとA同士で、合成すればどうなるんだろうか?」
当然と言えば当然の疑問である。
「あー……どうなるんでしょうね……とんでも無いことになるかも」
「よし、やってみよう」
「いやでも、Aランクの魔物って大きいのです。今までのやり方では不可能なのです」
「そういえばそうだな……」
リックはどうするか、しばらく考え、
「ちょっとコスト上がるかもしれないけど、やってみよう」
そう言いながらカタログを開いた。
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