第三十二話 Bランクになる
それからさらに数ヶ月が経過。
リックは稼いだDPでとにかく魔物を合成しまくった。
すでにSランクの魔物を、五十体以上は作成していた。
Sランクの魔物は増えたがSSランクの魔物は出なかった。
今回は運が悪かったのか、もしくは逆に今までの運が良すぎたのか、リックには分からなかったが、とにかくSSランクの魔物は出ていない。
魔物を作る以外にも、リックは階数を広げた。
4000DPで五階を作成し、16000DPで拡張する。
そして、フィールドチェンジも行う。
五階は最初、岩地というあまり使えないフィールドになったので、二度目のフィールドチェンジを行った。
五回外れを引いた後、六回目で攻撃力アップのフィールドを引く。
効果は単純で、この階に配置した魔物の攻撃力を上げる。敵には効果はない。
シンプルながら攻撃力を上げるというのは、中々強力な効果である。
そしてさらに数ヶ月後、
「ぱんぱかぱ〜ん! ダンジョンランクがBに上がったのです! これで赤叡山のダンジョンに攻めに行くことができますよー!」
「やったー」
ダンジョンランクがBに上がる。
これで魔物を外に出せる時間が長くなり、赤叡山に攻めに行くことが可能になった。
「えーと、Bランクに上がったので、新しく出来るようになることを説明するのです。ただ、Bランクは、そんなに新しく出来ることが多くないのです」
ユーリは、Bランクに上がったことで出来るようになったことを説明した。
・監視玉を増やせる。
一個しかない監視玉を三個までに増やせる。一個増やすのに50000DP必要
・魔物の卵Bを作成可能になる
消費DPは一個3000DP。
・スキル付与を使うことができるようになる
魔物にスキルをランダムでつけることができる。
一度に持てるスキルは二個まで、基本的に初期状態でスキルは持っていない。一回15000DP
「監視玉増やすのと、スキル付与ってかなり高いね……」
「監視玉は一つ増えれば、利便性が増しますし、スキル付与も、強いスキルがついたら、微妙な魔物でも物凄く強くなるのですからね。当然といえば当然なのです」
「そうかぁ。今DPいくつある?」
「現在のDPは55万なのです」
リックたちは魔物たちを外に出すことに備えて、DPを貯めていた。
一ヶ月間、魔物を外に出すためには一体につき3万DPかかるらしい。
55万DPだと出せる数は、十八体と多くはない。
「もう少し貯めたほうがいいかなー」
「うーん、この前のシロエちゃんとクルスちゃんの無双ぶりを考えると、行けるとは思うのですがね。念のためもう少し貯めるか……もしくはSSランクの魔物をもう一体作成できるまで、魔物合成をしてみるか、どちらかがいいと思うのです」
「そっかー、SSランクがもう一体いれば、負けることはないだろうからねー」
リックはどっちにしようか悩む。
「よし、じゃあ魔物合成をしようか」
そう決めた。
今まで結構な数を作ってきたのに、シロエ以降一体も作れてないので、作れるかどうかはかけであったが、作ってみることにした。
三回作り、ここまではSランクである。
そして四体目。
スライムが合成された。
大きさは普通のスライムを少し大きくしたくらいだが、何やら金ピカに輝いている。
「な、何こいつ、スライム? ただのスライムではないよね?」
「うーん……金色のスライムですか。初めてみるのですが……」
リックたちはそのスライムを観察する。
すると、
「あんまりジロジロ見ないでくれるか。恥ずかしい」
とスライムが声を発した。
渋い男の声だった。
「ス、スライムが喋った!?」
「嘘ー!?」
スライムはどれだけ進化しようが、知能は最底辺である。エンペラースライムですら、まともな思考能力を持ち合わせていない。
それが喋ったのだから、驚くのも無理はないだろう。
よく見ればこの金色のスライムには、円らな瞳が二つある。通常のスライムには目などない。
「あなた方は、何なのだ?」
「えーと、君の製造者なんだけど。君は何なんだ?」
「私は……何なのだろうか、よくわからない」
この辺はクルスの時と同じで、生まれたばかりなので、自分のこともよくわかってないみたいだ。
今回ばかりはユーリも金色のスライムの正体がわからないので、二万DPを消費して鑑定してみることにした。
「こ、これは……」
リックは鑑定結果を見て、度肝を抜かれた。
ゴッドスライム0歳 ランクSS 性別無
HP 12000/12000
MP 10000/10000
攻撃 888
防御 666
速度 1111
スキル 分身作成
「SSランクの……スライム!? しかもこのステータス、とんでもない数字だ」
「は、初めて見たのです……こ、こんな魔物がいましたか……SSランクの魔物は珍しいので、知らないのがいてもおかしくはないのですが……」
リックとユーリは、そのゴッドスライムを見て衝撃を受けた。
「あなた達は一体何なのでしょうか? ここは何処なのでしょうか?」
ゴッドスライムは、キョロキョロと周囲を不安そうに見回す。
円らな瞳と丸いビジュアルは、非常に可愛らしいが、とても強そうには思えない。これが本当にSSランクなのかと、リックは疑問に思う。鑑定が間違っている可能性は低いだろうけど、ゼロではないかもしれない。
「えーと、君は今さっき僕に合成で作られたんだけど……」
「私を作った? ……確かにあなたを見てるとそんな気がしてきました。言葉で言い表すのは難しいですが、何か信仰心のようなものを無条件で、あなたに抱いているようです」
ゴッドスライムと、ゴッドと名のついているものから、信仰していると言われて、何故だか不思議な気分にリックはなる。
「えーと、僕の名前は、リック・エルロード、こっちの精霊は、ダンジョン精霊のユーリ」
「私の名前は何というのでしょうか?」
「今から決めるから待っててね」
「命名はまだでしたか。ではよろしくお願いしますリック様」
リックはゴッドスライムの名前を考え始める。
「思いついたのです!」
数秒でユーリが名前を思いついたようだ。
過去の例から彼女のネーミングセンスが、ゼロだとは判明している。
「金色で丸い玉みたいなので、金ボールちゃんで、どうでしょうか?」
「色んな意味で駄目だよその名前は!!」
「色んな意味ってどういう意味ですか?」
「とにかく駄目!」
リックはユーリの命名を断固拒否した。
「ふむ、じゃあこういうのはどうじゃ?」
「あれクルス? 何でここにいるの?」
今回合成の手伝いにクルスは呼んでいない。
Sランクの魔物数体に手伝わせていた。
クルスはどの階にいろとか命令をされているわけではないので、ダンジョンマスタールームに来ることも可能ではある。
「何かとてつもない気配を感じたので、慌てて飛んできたのじゃ。合成で新しい魔物を作成したのじゃな。一見弱そうに見えるが、凄まじい力を秘めておるのがわかるわい」
「うん、そうだけど」
「そやつを見た瞬間、名前が浮かんだのじゃ。『神々しい者』これでどうじゃ?」
「こ、これでどうじゃと言われても……」
それは名前なのかと、リックは疑問に思う。
称号とか二つ名とかのような気がしていた。
しかし、クルスは渾身のドヤ顔を浮かべているため、指摘できず戸惑っていると、
「それは名前ではないでしょう。二つ名とか、称号とかです。却下します」
「な、なぬ! わしの名を却下すると申すか!?」
「ええ、そもそも私はリック様に作られたので、リック様から名前を賜りたく存じます」
「ぬう、まあ、父上が名前を決めるというのは、筋ではあるな」
「分かった僕が考えるよ」
リックは頭をフル回転させて、名前を考える。
ユーリほどではないが、自分もネーミングセンスはない方であると、リックは思っていた。
それでも何とか、いい名前をつけようと頭をひねる。
そして、
「じゃあ、君はギルだ」
「ギル……ですか」
「ギルドラスっていう神様の名前から取ったんだ。金が好きな神様で有名なんだ」
「なるほど、分かりました。良い名前を頂き誠に感激しております」
ゴッドスライムの名前は、ギルで決定した。
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