第二十四話 賢者の石

2020年12月26日

     <<前へ 目次 次へ>>

 リックは3階のダンジョンを4000DPで拡張。
 その後、1500DPでフィールドチェンジした。
 出来たフィールドは……

「墓地なのです」
「墓地?」
「ここで死んだ魔物は、1度だけゾンビとして蘇るのです。結構いいフィールドなのです」

 次に4階を作成2000DP。拡張に8000DP。
 フィールドチェンジに1500DP使用した。
 4階のフィールドは、

「おー、ワープゾーンなのです」
「何それ」
「この部屋内は多くの小部屋に仕切られているのです。それぞれの小部屋の中にはワープ台が4つあるのです。ワープ台に乗ったら別の小部屋に行くようになっているのです。どこかの小部屋に次の階に行くための穴があるのですが、そこまで行くには正しいワープ台に乗り続ける必要があるのです。中々攻略しづらい部屋なのですよ」
「あー思い出した。あったなーそんな感じの所。厄介だった」

 ダンジョンの増築はこれ以上はコストが大きいので、やめることにした。

 続けて2階に大型ビルベシュ養殖場を10000DPで建造した。
 さらに2階に1500DP使い効率アップをかけた。
 これでDPが一ヶ月で4000DP入るようになった。

 1万DPとちょっと残った。

「後は何に使うのですか?」
「僕の錬金術の研究に使うよ。そろそろ長年研究し続けてきた、あれの研究を再開しないといけないからね」
「あれって何なのですか?」
「5大神具の1つ、賢者の石だよ」
「なんなのですかそれは?」
「5大神具ってのは、とにかくすごい効果があるとされている、錬金術で作成可能な道具のことだよ。理論上はあると言われているんだけど、まだ誰も作った者はいない。5つ全て作れば、神にすらなれると言われているんだ。僕は神になりたいわけではないけど、誰も作ってないものを作るなんて、心が躍るだろ?」
「そうなのですか。賢者の石ってのはどんな効果があるのですか?」
「鉛を金に換えたり、生き物を不老不死にしたりする石と言われている。だけどこの賢者の石の本当の効果は、より完全な存在へ、生き物や無機物を近づける事だと思う。そもそも賢者の石は…………」

 とここから30分くらい、長々と喋ったので省略。

「…………って事なんだ。凄いよね」
「は、はい凄いのです」

 長々とよくわからないことを喋られて、ユーリは引きつった笑顔でそう言った。

「まあ、これだけ喋ったけど、賢者の石ってのは錬金術師たちの間では、おとぎ話みたいなもので、作ってるなんて言ったら、馬鹿にされるような代物なんだけどね」
「それは、本当に作れるのですか?」
「うーん分からないけど。でも誰も作ったことのないような物を作るのって、何だかわくわくするからさ。そこそこ研究してきたから作ろうと思うんだよ」
「私はご主人様のやることに特に反対はしないのです。作れたらいいのです」

 リックは賢者の石の研究を始めることを決めた。

「あーでも、ちょっと待つのです。赤叡山のダンジョンから、攻撃が来た場合はどうするのです?」
「うーん、それは来てから考えよう。どんなのが来るのか、分からないしね」
「わかったのです」

 リックは相手がSランクのダンジョンといえど、クルスとシロエがいるのなら、大丈夫だろうと思っていた。

 カタログを開きいくつか材料や道具を作って、リックは研究を始めた。

 二階、森と砦。

「ぬうー退屈じゃな」

 森の中をクルスは呟きながら、トボトボと歩いていた。
 最近クルスは退屈していた。
 最近リックは何だか難しそうな、錬金術の研究をし出したし、ユーリもそれを手伝っているし。

 そして、クルスが1番は遊び相手になると思っているシロエは、

「ぐーぐー」

 現在2階で眠りこけていた。
 この部屋の土は硬くて嫌っすねー、とか言い出して、2階に行き、2階にいるキングトレントに、葉のベッドを作らせて、そこの上でずっと気持ちよさそうに寝ていた。

 クルスはシロエが起きている所はほとんど、見た事がない。
 起きていたら、間違いなくいい遊び相手になると思うのにと、歯がゆい思いをしていた。

「よし、どうにかして起こすのじゃ」

 クルスは起こし方を検討し始めた。

「起きぬとは思うのじゃが、まずは普通に揺さぶってみるかの」

 クルスはジャンプして、草のベッドで寝ているシロエの近くに向かった。

「起きろ〜! 起きぬか〜!」

 クルスはそう叫びながら、シロエを揺さぶる。

「うーん……」
「お、反応した」
「……なぞなぞっす〜」
「お、意外にも起きた……なぞなぞ?」
「頭のいい人、優しい人、金持ちの人、3人が槍投げをしたっす。1番槍が飛ばなかったのは誰っすかあ?」
「うーん? 槍が飛ばなかった? んー? なぞなぞじゃろ? うーん、うーん…………」

 クルスは腕を組み悩み続ける。

「分からぬ! 答えを教えるのじゃ!」
「……ぐーぐー」
「こらー!! 寝るなー! 答えを教えぬか! 気になるではないか!」

 クルスはぶんぶんと揺らしながら、答えを聞き出そうとするが、眠ったままだった。

「ぐぬぬ……是が非でも起こす! くすぐってみるのじゃ。こしょこしょこしょこしょ」

 クルスは、シロエの脇の間やら足の裏などをくすぐってみる。

「うーん、うーん……」
「お、反応した」
「なぞなぞっす〜」
「またか!」
「《め》《はな》《は》はあるっすけど、《くち》や《みみ》はない。これなんっすか?」
「ムムム? 目と鼻と歯はあるが、口が耳はない……? ぬぬぬ? 何じゃろうか…………? 分かった! 植物なのじゃ! 植物には芽と花と葉はあるが、口と耳はないのじゃ! 正解じゃろ!」
「……ぐーぐー」
「こら〜! だから寝るなー! 正解と言え〜!」

 今度はバンバンと頭を叩くが、やはり起きない。

「ぬー。今度はどうするか……そうだ。おいそこのアンデッド」

 クルスが指名したのは、アンデッドの魔物リッチ。
 リッチはえ? 俺? みたいな表情を浮かべている。

「確かお主魔法が使えたじゃろ。魔法で氷を出すのじゃ」

 魔物は基本的に力が全て。圧倒的に格上であるクルスに言われたのなら、従うしかない。
 リッチは大人しく魔法を使い氷を出した。

「これを体につければ起きるじゃろう」

 クルスは氷をシロエの頬やおへその辺りにつけていく。

「……うーんうーんうーん」
「お、反応した」
「なぞなぞっす〜」
「またしてもか! こやつなぞなぞが好きなのか!? 今度はなんじゃ!」
「……ぐーぐー」
「問題を言わぬかーーー!!」

 今度はバシバシと往復ビンタをするが、全然起きない。

「ぬー疲れたわい。ちょっと休憩」

 何度やっても起きないので、ちょっと疲れてシロエの横にクルスは座りこむ。

 ちょうどそれと同時。
 1匹の小さい虫がシロエに近づいた。

 吸魔虫(きゅうまちゅう)と呼ばれる虫で、目を凝らして見ないと、分からないほどの大きさ。
 この虫は人間や魔物といった魔力のある生物から、少量の魔力を吸い取る虫である。
 ただ魔力を吸うのであれば、それでいいのだが吸われた箇所がしばらく痒くなることに加え、羽音があまりにも不愉快な音な為、人間、魔物から、ものすごく嫌われていた。

 その吸魔虫がシロエの顔の上を、ぶーんぶーんと飛び回っていた。

「うーんうーんうーん……」

 音を聞いて不機嫌そうになるシロエ。
 そして遂に、

「やかましいっす!」
「ぬお!」

 シロエは周囲を揺るがすような大きな声を上げながら、口から白いエネルギー弾を飛ばして、それを吸魔虫に直撃させた。
 吸魔虫は跡形もなく消滅する。

 エネルギー弾は吸魔虫を消滅させた後、天井に直撃。
 凄まじい爆発が起こり、衝撃で部屋全体が大きく揺れた。

「あたしの眠りを邪魔する奴は、何人たりとも絶対に許さないっす」

 普段のボケーとした顔からは想像できないほど、怖い顔になっているシロエ。

「何があったか知らんが起きたか。さっきまで起こそうとしておったんじゃが」
「さっきまで起こそうとしていた? さっきのクソ虫はチビ姉が用意したんすか?」
「ぬ? なんじゃそら、知らんぞ」
「嘘つくなっす。チビ姉でも、あたしの眠りを妨げるのは許さないっすよ……」

 ずずずずず、だんだんと、シロエの姿が龍の姿に変わってく。

「ぬぬぬ? よく分からぬが、わしと遊ぶ気になったようじゃの」

 龍に変形する様子をクルスはワクワクしながら見ていた。
 そしてシロエは龍に完全に変形した。

「来るが良い!」
「ぶっ潰すっす!」

 SSランクの魔物同士の戦いが始まった。

 と、いっても勝負はつかなかったが。

 クルスは攻撃をするのだが、シロエの凄まじい防御力に阻まれ。
 クルスは凄まじいスピードで、シロエの攻撃を全て回避していた。

 クルスとシロエは、ほぼ無傷だったが、2階にいた魔物たちが、シロエの放ったエネルギー弾の流れ弾を受け、何体かが瀕死の重傷を負う。
 さらにキングトレントが全治3ヶ月の大怪我を負った。

 戦いは少ししてリックに止められ、その後、クルスとシロエはリックにこっ酷く怒られた。

スポンサーリンク


     <<前へ 目次 次へ>>

Posted by 未来人A