第二十四話 賢者の石
リックは3階のダンジョンを4000DPで拡張。
その後、1500DPでフィールドチェンジした。
出来たフィールドは……
「墓地なのです」
「墓地?」
「ここで死んだ魔物は、1度だけゾンビとして蘇るのです。結構いいフィールドなのです」
次に4階を作成2000DP。拡張に8000DP。
フィールドチェンジに1500DP使用した。
4階のフィールドは、
「おー、ワープゾーンなのです」
「何それ」
「この部屋内は多くの小部屋に仕切られているのです。それぞれの小部屋の中にはワープ台が4つあるのです。ワープ台に乗ったら別の小部屋に行くようになっているのです。どこかの小部屋に次の階に行くための穴があるのですが、そこまで行くには正しいワープ台に乗り続ける必要があるのです。中々攻略しづらい部屋なのですよ」
「あー思い出した。あったなーそんな感じの所。厄介だった」
ダンジョンの増築はこれ以上はコストが大きいので、やめることにした。
続けて2階に大型ビルベシュ養殖場を10000DPで建造した。
さらに2階に1500DP使い効率アップをかけた。
これでDPが一ヶ月で4000DP入るようになった。
1万DPとちょっと残った。
「後は何に使うのですか?」
「僕の錬金術の研究に使うよ。そろそろ長年研究し続けてきた、あれの研究を再開しないといけないからね」
「あれって何なのですか?」
「5大神具の1つ、賢者の石だよ」
「なんなのですかそれは?」
「5大神具ってのは、とにかくすごい効果があるとされている、錬金術で作成可能な道具のことだよ。理論上はあると言われているんだけど、まだ誰も作った者はいない。5つ全て作れば、神にすらなれると言われているんだ。僕は神になりたいわけではないけど、誰も作ってないものを作るなんて、心が躍るだろ?」
「そうなのですか。賢者の石ってのはどんな効果があるのですか?」
「鉛を金に換えたり、生き物を不老不死にしたりする石と言われている。だけどこの賢者の石の本当の効果は、より完全な存在へ、生き物や無機物を近づける事だと思う。そもそも賢者の石は…………」
とここから30分くらい、長々と喋ったので省略。
「…………って事なんだ。凄いよね」
「は、はい凄いのです」
長々とよくわからないことを喋られて、ユーリは引きつった笑顔でそう言った。
「まあ、これだけ喋ったけど、賢者の石ってのは錬金術師たちの間では、おとぎ話みたいなもので、作ってるなんて言ったら、馬鹿にされるような代物なんだけどね」
「それは、本当に作れるのですか?」
「うーん分からないけど。でも誰も作ったことのないような物を作るのって、何だかわくわくするからさ。そこそこ研究してきたから作ろうと思うんだよ」
「私はご主人様のやることに特に反対はしないのです。作れたらいいのです」
リックは賢者の石の研究を始めることを決めた。
「あーでも、ちょっと待つのです。赤叡山のダンジョンから、攻撃が来た場合はどうするのです?」
「うーん、それは来てから考えよう。どんなのが来るのか、分からないしね」
「わかったのです」
リックは相手がSランクのダンジョンといえど、クルスとシロエがいるのなら、大丈夫だろうと思っていた。
カタログを開きいくつか材料や道具を作って、リックは研究を始めた。
〇
二階、森と砦。
「ぬうー退屈じゃな」
森の中をクルスは呟きながら、トボトボと歩いていた。
最近クルスは退屈していた。
最近リックは何だか難しそうな、錬金術の研究をし出したし、ユーリもそれを手伝っているし。
そして、クルスが1番は遊び相手になると思っているシロエは、
「ぐーぐー」
現在2階で眠りこけていた。
この部屋の土は硬くて嫌っすねー、とか言い出して、2階に行き、2階にいるキングトレントに、葉のベッドを作らせて、そこの上でずっと気持ちよさそうに寝ていた。
クルスはシロエが起きている所はほとんど、見た事がない。
起きていたら、間違いなくいい遊び相手になると思うのにと、歯がゆい思いをしていた。
「よし、どうにかして起こすのじゃ」
クルスは起こし方を検討し始めた。
「起きぬとは思うのじゃが、まずは普通に揺さぶってみるかの」
クルスはジャンプして、草のベッドで寝ているシロエの近くに向かった。
「起きろ〜! 起きぬか〜!」
クルスはそう叫びながら、シロエを揺さぶる。
「うーん……」
「お、反応した」
「……なぞなぞっす〜」
「お、意外にも起きた……なぞなぞ?」
「頭のいい人、優しい人、金持ちの人、3人が槍投げをしたっす。1番槍が飛ばなかったのは誰っすかあ?」
「うーん? 槍が飛ばなかった? んー? なぞなぞじゃろ? うーん、うーん…………」
クルスは腕を組み悩み続ける。
「分からぬ! 答えを教えるのじゃ!」
「……ぐーぐー」
「こらー!! 寝るなー! 答えを教えぬか! 気になるではないか!」
クルスはぶんぶんと揺らしながら、答えを聞き出そうとするが、眠ったままだった。
「ぐぬぬ……是が非でも起こす! くすぐってみるのじゃ。こしょこしょこしょこしょ」
クルスは、シロエの脇の間やら足の裏などをくすぐってみる。
「うーん、うーん……」
「お、反応した」
「なぞなぞっす〜」
「またか!」
「《め》《はな》《は》はあるっすけど、《くち》や《みみ》はない。これなんっすか?」
「ムムム? 目と鼻と歯はあるが、口が耳はない……? ぬぬぬ? 何じゃろうか…………? 分かった! 植物なのじゃ! 植物には芽と花と葉はあるが、口と耳はないのじゃ! 正解じゃろ!」
「……ぐーぐー」
「こら〜! だから寝るなー! 正解と言え〜!」
今度はバンバンと頭を叩くが、やはり起きない。
「ぬー。今度はどうするか……そうだ。おいそこのアンデッド」
クルスが指名したのは、アンデッドの魔物リッチ。
リッチはえ? 俺? みたいな表情を浮かべている。
「確かお主魔法が使えたじゃろ。魔法で氷を出すのじゃ」
魔物は基本的に力が全て。圧倒的に格上であるクルスに言われたのなら、従うしかない。
リッチは大人しく魔法を使い氷を出した。
「これを体につければ起きるじゃろう」
クルスは氷をシロエの頬やおへその辺りにつけていく。
「……うーんうーんうーん」
「お、反応した」
「なぞなぞっす〜」
「またしてもか! こやつなぞなぞが好きなのか!? 今度はなんじゃ!」
「……ぐーぐー」
「問題を言わぬかーーー!!」
今度はバシバシと往復ビンタをするが、全然起きない。
「ぬー疲れたわい。ちょっと休憩」
何度やっても起きないので、ちょっと疲れてシロエの横にクルスは座りこむ。
ちょうどそれと同時。
1匹の小さい虫がシロエに近づいた。
吸魔虫(きゅうまちゅう)と呼ばれる虫で、目を凝らして見ないと、分からないほどの大きさ。
この虫は人間や魔物といった魔力のある生物から、少量の魔力を吸い取る虫である。
ただ魔力を吸うのであれば、それでいいのだが吸われた箇所がしばらく痒くなることに加え、羽音があまりにも不愉快な音な為、人間、魔物から、ものすごく嫌われていた。
その吸魔虫がシロエの顔の上を、ぶーんぶーんと飛び回っていた。
「うーんうーんうーん……」
音を聞いて不機嫌そうになるシロエ。
そして遂に、
「やかましいっす!」
「ぬお!」
シロエは周囲を揺るがすような大きな声を上げながら、口から白いエネルギー弾を飛ばして、それを吸魔虫に直撃させた。
吸魔虫は跡形もなく消滅する。
エネルギー弾は吸魔虫を消滅させた後、天井に直撃。
凄まじい爆発が起こり、衝撃で部屋全体が大きく揺れた。
「あたしの眠りを邪魔する奴は、何人たりとも絶対に許さないっす」
普段のボケーとした顔からは想像できないほど、怖い顔になっているシロエ。
「何があったか知らんが起きたか。さっきまで起こそうとしておったんじゃが」
「さっきまで起こそうとしていた? さっきのクソ虫はチビ姉が用意したんすか?」
「ぬ? なんじゃそら、知らんぞ」
「嘘つくなっす。チビ姉でも、あたしの眠りを妨げるのは許さないっすよ……」
ずずずずず、だんだんと、シロエの姿が龍の姿に変わってく。
「ぬぬぬ? よく分からぬが、わしと遊ぶ気になったようじゃの」
龍に変形する様子をクルスはワクワクしながら見ていた。
そしてシロエは龍に完全に変形した。
「来るが良い!」
「ぶっ潰すっす!」
SSランクの魔物同士の戦いが始まった。
と、いっても勝負はつかなかったが。
クルスは攻撃をするのだが、シロエの凄まじい防御力に阻まれ。
クルスは凄まじいスピードで、シロエの攻撃を全て回避していた。
クルスとシロエは、ほぼ無傷だったが、2階にいた魔物たちが、シロエの放ったエネルギー弾の流れ弾を受け、何体かが瀕死の重傷を負う。
さらにキングトレントが全治3ヶ月の大怪我を負った。
戦いは少ししてリックに止められ、その後、クルスとシロエはリックにこっ酷く怒られた。
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