第八話 Aランク同士で魔物合成
リックはAランクとAランクの合成を行うため。
DPを使って道具を作っていた。
残りのDPは3500。
「まず壷は大きい壷を作らないとな」
小型の壷では当然入りきらないため、リックは大きな壷を探した。
リックは「錬金壷」とカタログに向かって言い、ページがめくられる。
複数の候補があり、どれにするか悩む。
「たぶん、元僕のアトリエにあった壷の大きさくらいあれば大丈夫だろうけど、あれは確か中型の壷だったかな」
中型錬金壷は2000DPだった。
まずはこれを作る。
小型よりふた回りくらい大きい壺が作られ、部屋の真ん中に置かれる。
「後は水はこのくらいで、融解液はこのくらいか、後ノコギリがいるな……えーとギリギリ足りるか……な?」
リックは計算して足りると判断し、それらをDPで作った。
「合成する魔物はどれとどれなのですか?」
「えーとサイクロプスは流石に使えないし。キングスライムとアラクネかな」
緑色のキングスライム。
それと蜘蛛の体に人間の女のようなものが付いている、魔物アラクネを使う事にした。
まずリックは余っていた魔物に手伝わせながら、壺に大量の水を入れ、融解液を加える。
その後アラクネの魔石を収集する。
蜘蛛の部分の背中をゴリゴリとノコギリで切り裂き、
魔石を採取する。
思ったよりエグい光景でユーリは視線を逸らしている。
Gランクの魔物の魔石の十倍以上大きく簡単に取り出せないので、サイクロプスの手を借りる。
この後、力が必要な仕事はサイクロプスの手を借りた。
魔石をとった後はアラクネを壺の中の入れて溶かす。
キングスライムをノコギリで切って魔石を取り出せないので、
またもサイクロプスの手を借り、
キングスライムの中に手を入れさせ魔石を採取する。
その後キングスライムを壺の中に入れて溶かす。
「後は一緒だね。恐らくGランク同士よりも時間はかかると思うけど」
「どうなるのでしょう。私ちょっと怖いのです」
結構時間が経ち、
「お、変わった」
液体の色が変わり魔石を入れるタイミングになった。
「頼むサイクロプス、魔石を壺の中に入れてくれ」
サイクロプスは命令に従い。
魔石を持った後、
壺の中に投入した。
入れた直後、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
と音がなり、壺が激しく揺れ始める。
「うわ!」「ひゃ!」
二人は揺れに驚き声を上げる。
揺れは地面にまで伝わり、
二人も揺れていた。
しばらくして揺れながら、煙が発生する。
すごい量の煙で、あたりが一面真っ白になる。
煙が上階に逃げて晴れる。
壺はそのままで割れていない。
リックとユーリはしばらく沈黙しながら壺を見つめる。
すると、
「何じゃここは????」
少女の声が壺の中から聞こえる。
「女の子??」
「合成成功したのですか?」
「ちょっと見に行こう」
リックがそう言って様子を見ようとした時、
「何じゃこれは、邪魔じゃな」
壺の中にいる女の子? がそう言った瞬間、
凄まじい轟音がなり、壺が砕け散った。
二人は驚き身構え壺の方を確認する。
そこには、
壺の残骸の真ん中に、
白い髪の少女が、
一糸纏わぬ姿で平然と立っていた。
現れた少女は、
白いセミロングの髪、
不気味なぐらい白い肌、
顔は少し幼く感じるもかなりの美少女で、
目つきは鋭く小柄ながら威圧感を放っていた。
その少女が一糸纏わぬ姿で立っていた。
(この子が合成で作られた魔物なのだろうか?)
リックは少女を見ながらそう思った。
すると、ユーリがわなわなと震えながら、
「ちょ、ちょっと! なんでなのです! 服を着るのです! 恥ずかしくないのですかそんな格好で!」
リックは、ユーリも格好に関しては人のこと言えないでしょ! と思ったが口には出さなかった。
「服……か……」
少女はそう呟き、
手を振ると、
体が漆黒の闇に包まれて、
その闇が黒いドレスに変化した。
「よかった着たのです。今の技は何なのでしょうか? 何の魔物なのでしょう?」
ユーリがリックに話しかける。
人間と同じような姿の魔物は結構いるが、
中々見分けは付けられない。
「えーと君は……?」
リックは少女に近づき話しかけた。
「お主は誰じゃ」
「えっと僕はリック……リック・エルロードさ、君は?」
「……わしは……」
少女がいきなり頭を抱えだす。
「わしは何だ?」
「え?」
「わしは誰で、何なのじゃ? 何故ここにいる? 何のためにここにいる?」
少女はぶつぶつと呟いている。
合成されて作られたなら自分の事が一切わからなくても不思議ではない。
しかし、それなら普通に言葉を話しているのは不自然ではあるが、
「わしは何故この世界にいる? そもそもこの世界とは? どういう原理で動いている? 何故土は茶色い? 何故血は赤い? そもそも色とは全ての者が同じに見えているのか? 生物の意識とは何だ? 何故我々は世界を認識できる? 駄目だ何もわからんのじゃ……」
「ほとんど誰にもわからないようなことだそれ」
「何もわからないという事がこれほど恐ろしい事とは思わなんだ……」
ずーんと落ち込んでいる少女、
状態としては記憶喪失に近いのだろう。
すると、少女はリックの方を向き、
「お主は何じゃ、存在理由はなんじゃ?」
「そ、存在理由!? いや、存在理由って言われても……?」
突拍子も無い質問をされ、おろおろとするリック、
少女は今度はユーリの方を向き。
「お主は何じゃ、存在理由は何じゃ」
「私はユーリ、ダンジョン精霊なのです。ご主人様の為に存在しているのです」
「ふむ……」
少女は何故ユーリの胸を凝視している。
そしてその後、自分の胸を見る。
平べったーい胸だ。
見比べた後、素早く手を動かし、
ユーリの衣服を剥ぎ、胸を露出させた。
「!?!?!?!?!?」
露出されたユーリの大きな胸がプルンプルンと震える。
ユーリは何が起こったか分からず、
一瞬ピタリと固まり、
「ひゃあ!」
と悲鳴を上げながら、慌てて両手で胸を隠した。
しかし、その一瞬のロスの為、
リックはユーリの胸をバッチリと見てしまった。
慌てて目を逸らすが、ユーリの胸が目に焼き付いて離れない。
「ちょちょちょあんた!! な、何をするのです!!!」
「何かムカついたのじゃ」
「何なんのですかその理由は!!!」
ユーリは衣装を着なおす。
「ご主人様、見たのですか?」
「いや……あーえっと、あ、危なかったけど、みみみみ見えてない」
嘘である。
顔を真っ赤にしてどもりまくってるので嘘と丸分かりである。
「嘘です! 見たのです! ご主人様に見せるのは初めての夜って決めてたのにー!!」
「は、初めての夜??」
何だそれはと、リックは動揺する。
しかしこうして恥ずかしがっているので一応羞恥心はあったんだなぁとリックが思っていると、
「分かったのです。こうなったら全部脱ぐのです。ご主人様! 私の全てを見るのです!」
「いやいやいや何言ってんの!? やけにならないで!?」
服に手をかけ脱ごうするユーリをリックは全力で止める。
やっぱ羞恥心は薄かったかと、リックは考えなおす。
「え、えと所で君は自分が何の魔物か分からないよね?」
リックは気を取り直して本題に戻る。
少女が何の魔物かを調べる必要がある。
「分からん、それよりもじゃお主はわしの何なのじゃ」
「えーと……君を作ったのは僕っていうか」
「お主がわしを作った?」
少女はリックの顔をジロジロと見つめる。
リックは何となく少女に見られて気圧される。
「じゃあお主がわしの父親ということか、確かに何かお主の言う事には逆らえないような感じがする」
絶対服従は効いているようだった。
「えーと父親と言われればそうなのかなぁ……」
「なるほどではわしはお主の子になってやろう」
「あ……はいじゃあ僕が父親にならせて頂きます」
(変な会話してるのです……)
リックと少女は妙な会話を繰り広げ、
ユーリはその様子を呆れた目で見ていた。
「よし、これからお主の事は父上と呼ぼう。それでそっちの女はわしの母親なのか?」
「え?」
ユーリは母親と言われ僅かに考える。
そしてリックの方を見た後、少女の方見て、
それからにやりと笑い。
「それ良いのです……確かに私はあなたの母親と言っても良い存在なのです。つまりご主人様とは夫婦と言ってもいいのです」
そんな事をにやにやしながら言うユーリをどう言う顔で見ればいいか分からないリック。
「そうか、じゃあお主の事は母上と呼ぼう」
「呼んじゃっていいのです! 正直脱がされた時はムカつくガキだと思ったのですが、今、全てを許したのです」
「それで父上と母上に聞くのじゃが、わしの名前は何なのじゃ?」
リックとユーリは顔見合わせる。
「えーとまだ考えてないって言うか……」
リックが少し申し訳なさそうにそう言った。
「何と! まだつけておらぬのか!?」
「うん……まあ……」
「ならば早くつけぬか! 威厳と尊厳に満ちた名前をつけるのじゃ」
「い、威厳と尊厳……」
リックは難しい要求に少し困る。
「髪が白いしシロちゃんで!」
「そ、それは流石に適当すぎるでしょ!」
ユーリの意見をリックは却下する。
「うーんそうだなぁ…………クルス……クルスにしよう」
「何でクルスなのです?」
「錬金術には人工的に人間を作る術があるんだけど、それがホムンクルスって言うんだ。それから取った、僕が作った子って考えて一番先に頭に浮かんだんだ」
「そうなのですか、いいと思うのですご主人様らしくて」
「じゃあクルスで君の名はクルスだ」
「クルスか、威厳と尊厳があるか分からぬが父上が付けた名前じゃ、不満は言わんのじゃ」
クルスは気に入ったのか気に入ってないのかわからない返した。
「それでクルスちゃんは何の魔物なのでしょうか?」
「さぁ分からぬのじゃ」
「うーん、まあ後で……あれ? クルスちゃん、ちょっとお口を大きく開けるのです」
ユーリが何かに気付いたのか、そう言った。
「何でじゃ?」
「ちょっと気になることが」
クルスは怪訝な顔をしながらも口をあーんと開ける。
ユーリとリックは一緒に口の中を見る。
口の中には鋭い牙が生えていた。
「やっぱり牙があるのです。この牙…………吸血鬼(ヴァンパイア)の牙なのです……」
吸血鬼(ヴァンパイア)、生き物の血を吸ったり日の光が苦手だったりする吸血鬼(ヴァンパイア)である。
「でも吸血鬼(ヴァンパイア)のランクってAだよねA以上には何があってもならないのかな?」
「違うのですご主人様……Aランクの吸血鬼(ヴァンパイア)と言うのは全て、他の吸血鬼(ヴァンパイア)に噛まれて吸血鬼(ヴァンパイア)になった者達なのです」
そこまで言われてリックは察した。
クルスは自分達が合成で作った。
つまり他のに噛まれて出来た吸血鬼(ヴァンパイア)とは根本から違う。
最初から吸血鬼(ヴァンパイア)だった存在を……
「真祖(トゥルーヴァンパイア)……」
そう呼んだ。
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