第四話 魔物合成
「じゃあさっそく魔物を作ってみましょうか」
ユーリがそう言う。
リックは魔物ってDPいくらで作れるんだっけ? と思いカタログを見て確かめる。
魔物の卵と書いてある横に100DPと書いてあった。
「100DPもするんだ」
「ええ、最初は五個作るのです」
「あれ? これって魔物の卵って書いてあるだけで何の魔物の卵なのか書いてないけど」
「何が出てくるかは完全にランダムなのです。魔物のランクに応じて出て来る確率が変わるのです。ページの下の方に書いてあるので見てみるのです」
リックは言われた通り見てみる。
魔物のランクはG〜SSSまで分かれており、
このカタログには、
Gが50%でFが30%Eが10%Dが5%と、
どんどん下がっていき、
Sに至っては0.01%しかない。
SSとSSSランクは出る事がないらしい。
SSとSSSと言ったら伝説級の魔物になるので、
出ないのは当然と言えるかもしれない。
「僕、運悪いけど大丈夫かな……?」
「大丈夫大丈夫! 運なんてのはその時その時で変わるものなのです!」
「それもそうかな、よし作ろう」
「はい!」
ユーリは返事をした後、目を瞑り集中し始めた。
すると体全体がピカッと光りだす。
その後、何もなかったはずの空間から卵が出現した。
ユーリは出てきた卵を抱える。
斑点模様の少し大きめの卵だ。
「それが魔物の卵なんだ初めて見たなー」
「あまり見る機会はないかもしれないのですね」
すると卵がカタカタ! と動き出す。
「孵化するのです!」
ユーリは卵を床に置く。
卵の動きは激しさを増し、
ピシッと殻にヒビが入る。
その後ボロボロと殻が崩れて行き、
中から魔物が姿を表すした。
「お! おぉ……」
「バ、バーン! 最初の魔物はゴブリンちゃんなのです! おめでとうなのです!」
出てきたのはちっこいゴブリンだった。
Gランクの最弱クラスの魔物、
錬金術師のリックが錬金術を使わずに勝てる程度の魔物だ。
「ま、まあ最初はこんなもんなのです」
「ゴブリンかぁ……ってあれ?」
ちっこいゴブリンがみるみる成長して大人の姿になった。
「こんなに早く成長するの!? 魔物って!?」
「ああこれは、すぐ成長しないと使い物にならないからDPを使って成長させてるのです。成長させる分のDPも100DPの中に入ってるので安心するのです」
「へーそうなんだ」
「じゃあ気を取り直してもう一個作るのです! 今度は強い魔物のはずなのです!」
そう言って魔物を次々と作った結果……
スライム、スライム、ゴブリン、スライム、
「全部Gランクの魔物なのです……」
「これ初めて冒険に出るって言うパーティーでも楽勝で倒せるぞ……」
リック達はいきなり躓いていた。
「おかしいのです……普通、一体くらいはFランク以上が出るはずなのに……」
「やっぱり、僕は運が悪かった……」
「うーん残り500はダンジョン拡張のために使った方がいいと思うのですが残りも魔物に使うしか……あ、そう言えばご主人様自身が強いのなら自分で戦えばいいのです!」
「え? 僕、強くないよ?」
リックは錬金術師の知識はあるが個人の戦闘能力は低い。
「またまたご謙遜をダンジョン精霊は契約者の強さを測ることが出来るのです。こうやって……」
ユーリは目を細めてリックを見る。
「あ、本当に弱いのです!」
「いや、だって僕、錬金術師だし」
「ご主人様が弱かろうが私のご主人様への想いは一切変わりませんが、でも弱いとすぐやられちゃいますよ!」
「でも僕、人間だし殺されはしないんじゃないかなぁ」
「ダンジョンの一番奥にいる者を人間だと誰も思わないのです! 人間の姿の魔物だと思われて殺されるのです!」
「そ、そっかぁ……」
「どうしたら……あ、でもさっき錬金術師って言ったですよね。戦いに使える物を作ればいいかもしれないのです」
「うーん、それだとコストがなぁ」
錬金術は何かを作る為には当然、材料がいるが、
戦いに実戦レベルで使える物を作るには、
ある程度、高価な材料が必要だった。
勇者パーティーにいた時は、金を融通して貰えたのだ。
リックもゴーレムやら爆弾やらを作れば、
駆け出しの冒険者くらいなら簡単に蹴散らせるが、
それらを作るには高価な材料がいる。
リックはミルネ草の10DPというDP消費量から、
とてもじゃないがゴーレムや爆弾は作れないと予想していた。
「うーんコストですか……あ、でもここにも使える物あるですよ!」
「え?」
「魔物ですよ魔物! 錬金術には複数の魔物を合成して別の魔物を作り出す術があると聞いたことがあるのです!」
「あー魔物合成か……でも僕やった事ないからなぁ……」
「えー……できないのですか?」
「いや、たぶん出来ると思うけど」
「え!? やった事ないのですよね!?」
「やった事なくてもやり方が書いてある本を見た事がある、一回読んだだけだけど内容は全部、頭の中に入ってるよ」
「一回読んだだけで、覚えれるのですか?」
「錬金術師はだいたいそんなもんだと思うよ」
錬金術師は知識量がものをいう職業だから、頭のいい人が多かった。
一回読んだだけで内容を全て覚えれる程の者はさすがに少ないが、
「すごいのです! ご主人様、頭いいのです!」
ユーリが褒める。
「でも合成するには魔物だけいればいいってわけでもないからね……いまあるDPで出来るかな……?」
リックはそう言いながら、
本に向かっていくつかの単語を呟く。
「300DPかかるけど出来そうだよ」
「むむむ300ですか、合成はうまくいけばGランク同士からDランクの魔物が作り出せるとの話なのです。やってみたほうがいいと思うのです!」
「じゃあ今から僕の言う物を作ってね」
「はいなのです!」
リックは必要な物をユーリに伝え、
ユーリは言われた物を作った。
「これが合成に必要な物なのですか」
作った物は四つ
まず小型の錬金壺、錬金壺が無いと簡単な調合以外は何も出来ない。小型と言っても普通の壺に比べればかなりでかい。
続いて透明の謎の液体、小さな瓶に入っている。
それと水、普通の水、木のバケツにいっぱいに入っている。
最後に包丁、これも普通の家庭にありそうな包丁だ。
「よしやるぞ!」
「ワクワク」
まず水を壺に注ぎ、瓶に入っている謎の液体を水に加える。
すると色が青色に変わる。
その後ゴブリンを前に立たせ腹の辺りを包丁で思い切り突き刺す。
ゴブリンは刺されたのにも関わらず何の反応もしない。
「絶対服従だとこうなるのか……」
リックは奇妙な光景にそう呟いた。
そのゴブリンの腹部に穴を開ける。だいぶグロい。
ユーリはうえぇと言いながら目を逸らす。
リックは平然としている。
ゴブリンの腹の穴から丸い石のような物も採取する
するとばたりとゴブリンは倒れた。
倒れたゴブリンを青色の液体に入れると、
ジュー……と音を立て、跡形もなく溶けた。
次はスライム、
スライムは素手で手を体の中に入れ、
さっきゴブリンから採った丸い石と殆ど同じに見える物を採取した。
スライムもその後、壺に入れ溶かす。
「これで中の液体が紫色に変化したら、この魔石を両方とも壺の中に入れる。それで合成完了だ」
「なんか結構エグいのですね錬金術って……」
ユーリは若干、気分悪そうにそう言った。
少し経ち、壺の中の液体が紫色に変化する。
「じゃあ魔石を入れるよ」
「ワクワクワクワク」
リックは魔石を壺の中に入れる。
するとグルグルと壺の中の液体が渦を巻き始め。
ぼふっと煙が発生して、錬金壺がバリンと音を立て割れた。
煙が晴れ合成された魔物が姿を表す。
かなりの巨体、
体の色は黒い。
頭には角が生えており、
顔には大きな目玉が一つある。
「これってサイクロプスなのです!?」
Aランクの魔物、サイクロプスが合成された。
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