39.森に入る

2020年12月20日

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 トーカ村から歩いて数十分のところに、ルクファナの森はあった。

 確かに言われた通り、森の中心辺りに巨大な樹がある。
 普通の樹より抜きんでた大きさであった。

「本当に大きい樹だにゃー」
「何年前からあれば、あんなにでかくなるのじゃろうか。まあ、あれなら目印としても申し分ないのう」

 あれだけ大きければ、迷わずに目指すことが出来る。

 俺たちは森に入り、樹を目指した。

 森に入って歩き出して、数分後、

 魔物と出くわす。

 二足歩行している大きなトカゲだ。
 リザードマンというやつだが、普通のリザードマンと違うところがいくつかある。

 まず体色が黄色だ。普通は緑である。
 さらに角が生えており、その角がビリビリと電気を帯びている。
 そして、通常のリザードマンより一回り大きかった。

 俺は【鑑定】を使って調べてみる。

『サンダーリザードマン Lv.33/43
 雷を帯びたリザードマン。非常に強力な電撃を操る。
 角は弱点で攻撃されると、数分間行動不可能になる。
 HP 222/222
 MP 32/32
 スキル 【雷撃サンダーショックLv3】
 耐性 【電耐性Lv10】」

【鑑定】も旅をしてあげており、レベル5になったので弱点とスキルまで見ることが出来るようになった。

 弱い魔物ではないが……まあ、俺の敵ではない。

「ここはアタシが行くにゃ!」

 とレーニャが装備していたナックルで、リザードマンに殴りかかる。

 レーニャも勇者との戦いや、旅の間にレベルは大幅に上がり、52になっている。

 レベル差があるので、レーニャは性能でサンダーリザードマンを圧倒。
 あっさりと勝利した。

「勝ったにゃー」
「サンダーリザードマンは結構強い敵じゃったという記憶があったがのう。レーニャも成長したのう」
「えへへ」

 それから俺はサンダーリザードマンを吸収。

 HP55上昇、MP8上昇、攻撃力13上昇、防御力11上昇、速さ10上昇、スキルポイント3獲得。

 このレベルの魔物がこの森にはどれだけいるのだろうか?

 頻繁に出るようなら、結構俺もここで強くなれるな。

 俺たちは巨大な樹を目標に森を歩いていく。

 巨大な樹が見えなくなった時などは、ジャンプして確認した。
 今の俺のジャンプ力なら、通常の樹の高さ以上飛ぶことが可能である。

 サンダーリザードマンは二度目は出なかったが、それに近いくらい強い魔物は、それなりに出現した。

 苦戦は全くせず、片っ端から退治して吸収していく。

 旅の道中にはあまり強い魔物と出くわすことはなかったので、そこまで急成長は出来なかったが、今回はかなりの勢いで成長している。

 今度からは危険だと言われている場所にも、積極的に行ってみるのもありだろう。

 数時間歩き続け、巨大な樹の根元に到着。

「近くで見たらさらにでかいにゃ。物凄く太いし」

 樹の太さは際立っていた。
 一周するだけで、数分かかりそうである。

「ここから西に行けばいいのじゃったの。テツヤ、コンパスは持っておるか?」
「ああ」

 方角を確かめるためのコンパスは、旅をするためには持っておきたいので、以前に購入し、常に携帯していた。

 俺は懐からコンパスを取り出し、西がどちらかを調べる。

「こっちだ。行こう」

 西がどちらかを調べたら、その方角に向かって俺たちは歩き始めた。

 魔物を倒しながら歩いていく。それなりにレベルの高い魔物が出てはきたのだが、苦戦するほどの奴は出てこなかった。

 歩き続けて一時間ほど、

「お、あれじゃないか?」

 俺の視界の先にオンボロの小屋が見えてきた。

「たぶんそうじゃのう」
「ボロい小屋だにゃー」

 近付いて確認する。

「ふむ、もしかしたら出て行ったのは一時的なもので、ここに帰ってきている可能性もあると思っておったが、このようすではそれはないじゃろうな」

 小屋はもう何十年も放置されているというくらいのボロボロさだ。
 ここに人が住んでいるとは到底思えなかった。

「中に入って調べてみよう」
「ああ」

 俺たちは小屋の中に入る。
 扉は壊れていたので、開けずに中に入ることが出来た。

 家の中もボロボロだが、床に魔法陣が書いてあったり、かけたツボがあったり、ボロボロの本が置いてあったりと、魔女が住んでいたという雰囲気は微かであるが残されていた。

「生命の魔女かどうかは分からんが、魔女が住んでおったのは間違いないのう。どこにいったか手掛かりはないものか」

 俺たちは小屋の中を捜索した。

 若干抵抗はあるが、タンスの中や棚の中も隅から隅まで探した。
 メクはわしに呪いをかけたやつに対する礼儀などない、と全く遠慮なしで部屋の中をあさっていた。

「……これは」
「どうした?」

 メクが何かを発見したようなので、俺はそれを見に行く。

 一枚の紙を見つけたようだ。

 それにはこの世界の地図が描かれていた。

「これを見よ。丸で印がついておる」
「本当だ。『次の目的地』っても書いてあるぞ。ここにいるのかな?」
「目的地と書いてあるだけじゃから、分からんが……ほかに手掛かりもないのなら、ここにいくしかないじゃろうな。しかし、ここはテンノース山か……」
「テンノース山?」
「印が入っている場所がちょうどテンノース山と呼ばれる山がある場所なのじゃ。この山は結構有名な山じゃ。世界で二番目に高い山として知られておる。場所はハルカード帝国にあったはずじゃ。龍人どもの帝国じゃな。世界最大の国としても知られる。この国とは隣接しており、かなり仲が悪かったと記憶しておるのう。今は休戦中じゃったが、戦は何度も起こっておる」

 龍人とは、龍の翼と尻尾、角が生えている種族だ。
 リザードマンとは根本的に違い、リザードマン扱いされるとブチ切れることがあるらしい。俺も何度か見たことはある。

 隣接しているのならそんなに遠くはないかもしれないが、また別の場所に行かないといけないとは面倒だな。

 何かこの調子でたらい回しにされそうな予感を感じてしまう。

「とにかくここに行ってみるかのう」

 もうすでにいない可能性も十分あり得るが、ほかに手掛かりもない。
 次の目的地はテンノース山に決定した。

 早速森を出てハルカード帝国へと向かう。

 隣の国なので、そこまで遠くはなかった。数日歩いていたら到着した。

 クレンフォス王国との国境付近にある、小規模な町に立ち寄った。

 アルメイクという町らしい。

 町に入ると、龍人の国らしく龍人だらけであった。

 ただ町民の俺たちを見る目はあまり良くない。

 特に獣人であるレーニャは嫌われているようで、露骨に嫌そうな視線を向けられていた。現在は戦をしていないようなので、一応入ることは問題ないようだったが。

 テンノース山は有名な山であるが、メクも詳しい場所までは知らないという。
 まずはここでテンノース山の場所を尋ねるとしよう。

 ただ、獣人のレーニャだけでなく人間の俺もあまり好ましく思われていないようで、結構無視される。

 五人目くらいでようやく口を聞いてくれる龍人と出会った。

「あ? テンノース山? あんなところに人間と獣人が何の用だ」

 話を聞いてくれるといっても、かなり険悪な感じなのだが。
 無視よりは遥かにましだ。

「人を探していて………」
「テンノース山は帝国の一番北の方にあるが……はっきり言って危険だ。ドラゴンが住んでるからな。まあ、人間と獣人がどうなろうと俺の知ったことではないがな」
「北と言っても分かりにくいので、もっと詳細な場所を教えてくれないか?」
「めんどくせーよそんなの。北に行きゃ山が見えっから、そこ目指してあるけばいいだろ」

 そんな適当な方法でたどり着くのか?

「距離はどのくらい?」
「歩きだと二十日はかかるぞ」

 二十日か。
 まあ、俺たちならもっと早く行けるだろうが……それでも十日はかかるか?

 少し路銀が厳しくなってきている。
 十日間移動するには、今の金額では足りないだろう。
 金を稼がなければならない。

 この国に冒険者ギルドがあるかは知らないが、この感じだと俺が登録すること
 は不可能だろう。

 魔物を倒して、その素材を売るというのが一番いい方法か?

 買い取ってくれるかどうかだが……一応、この町で食料は買えたので(店の人の愛想はめっちゃ悪かったが)売るのも問題はないと思う。

 今までは【死体吸収】が使えないので、素材を売るというは避けていたが、この際仕方ないな。

 とりあえず今日は宿を探すとしよう。
 日が沈みだしてきたからな。

 てか宿には泊まれるのか?

 確認してみよう。

 最初の宿には獣人お断りと書いてあった。無理そうである。
 次の宿にも行ってみたが、ここも獣人お断りの看板が。

「何だか申し訳ない気分だにゃ」
「レーニャが謝ることじゃない」
「この町は本当に獣人を嫌っているようじゃのう。まあ、長い間戦争をしておったようじゃし、無理もないと言えば無理もないが……レーニャはケットシーであるが、クレンフォス国民ではないのに理不尽じゃのう」

 何軒か見て、ようやく獣人お断りじゃない宿を発見する。

 宿に入るといい顔はされず、恐らく少し割高に宿泊費を取られたが、泊まることが出来た。

「とにかく路銀がもうつきそうだ。かなり高く取られたし。一旦この町で金を稼ごう」
「まあ、あまり長くは留まりたくない町じゃが、今は仕方あるまいな」

 あまり住民からいい目で見られないので、さっさと出ていきたいのはやまやまなんだけどな。

 俺たちも強くなったし、路銀を稼ぐくらいは恐らくそんなに時間はかからないと思う。

 それから、夜になり俺たちは眠りについた。

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