第30話 塔に入る
ガードウルフとぺペロン達の戦いが始まった。
まず3体のガードウルフが戦闘を走っていたペペロンに、一斉に飛びかかってくる。
「はっ!」
ペペロンは居合抜きで三体のガードウルフを切り捨
てた。
「ブリザード」
ノーボが吹雪を起こす魔法、ブリザードを使用した。冷たい風が発生。
その風に当たったガードウルフは瞬く間に凍り付く。
ガスはナイフで確実にガードウルフを仕留めていった。
修行段階のパナとリーチェも、二人で一体のガードウルフの相手をして、倒していた。
「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあああーー!」
一番働いていたのはファナシアだ。
二刀の剣を振り回し、敵を次々と斬り裂いていく。圧倒的な速度だ。常人ならその姿を捕らえることは出来ないだろう。
瞬く間にその場にいたガードウルフが全滅した。
「よし、全滅したな。それでは塔に入るか」
ペペロンは一旦剣を鞘に収めながら、そう言った。部下たちは皆頷く。ダメージは誰も貰っていないようだ。
まあ、こんな所で怪我してもらっても困るがな。中はこれより遥かに強い敵がいると知っているペペロンは、そう思った。
そして、ペペロンが先頭を歩き、一行はボルフの塔に入って行った。
ぺペロン達が、ガードウルフを倒したところを遠くから、Aランク冒険者パーティーは唖然として見ていた。
「嘘だろ……」
思わずそう呟いた男は、パーティーリーダーのロック・バレスト。金色の髪が特徴的な男である。魔法に剣に何でも出来る万能タイプの男だ。こういうなんでもやれるタイプは、色んな場所に行くことになる冒険者パーティーには重要な存在となる。
「ガードウルフって、結構強いわよね……」
そう言った女は、魔法使いのメナーシ・キャンベラ。ローブと、とんがり帽子を被っており、誰がどう見ても魔法使いであると分かりやすい格好をしている。
「Aランクの俺たちなら、一対一では倒せるだろうが、複数体を相手にするとなると、かなり厳しい相手だぞ」
大きな鎧を身に纏った男、ガードのバーン・ジェントリーが言った。背が高く、顔もごつい男だ。
彼の言う通り、ガードウルフはかなり強い敵だ。そのため、数十体もいる場合は、普通であれば弓や、魔法などの遠距離攻撃で、何体か釣りだしてから倒す。それをぺペロン達は正面突破で、いとも簡単に倒してみせた。驚くのも当然である。
「あ! 塔に入って行くよ!」
ヒーラーのマイカ・リスターが慌てていった。小柄で白魔導士のような格好の少女だった。パッと見、十代の前半くらいに見えるような見た目だが、二十歳である。
「ま、まずい。この塔の一階には……! 急ぐぞ!」
ロックの指示で、パーティーは走り出してボルフの塔へと向かった。
○
ボルフの塔一階。
大きな丸い部屋だ。真ん中に、何か光る円がある。それ以外には、何もない。上に登るための、階段もないようだ。
「あの光ってるの何なんですか?」
リーチェが質問する。
「あれは転送陣です。あの円の上に乗ると、上の階に転送されます」
ノーボが質問に答えた。
「へー」
「階段で上に登るんじゃないのか」
「ええ、あの転送陣に乗り上に登ります。上の階に行けば、あの転送陣が複数あり、正しい転送陣に乗らなければ、下の階へ転送されてしまいます」
「面倒そうだな」
ペペロンは最初に来たときは、確かに面倒だったなと、ゲーム時代に来た時の事を思い出す。
何度も戻されながら、頂上に到着した。リアルラックがあまり良くない、ペペロンはそれはもう最上階まで行くのに、何時間かけたことか。
今は最上階まで行くのに、どの転送陣に乗ればいいのか完全に記憶しているので、簡単に最上階まで行けるだろう。
「それよりもお前ら、気を抜くな。この階にもモンスターは出てくる」
ペペロンは油断させないように、そう言った。
この一階には、現在は何もいない。だが、転送陣に近づくと、転送陣の光が消えて、ガードウォリアーという大型の人型ゴーレムが六体出てくる。そいつらを全部倒せば、転送陣の光が復活する。ガードウルフよりか強くて、生半可な実力では太刀打ちできない。
初見の頃は、完全に油断して転送陣に近づき、ガードウォリアーに瞬殺された経験がある。
今は、負けることは無いだろうが、その時の経験が若干トラウマになっていた。
気を引き締めて、転送陣に近づく。
あと5歩ほどで、転送陣まで行けるという距離で、転送陣の光が消えた。
そして天井から、六体のガードウォリアーが降ってくる。
鉄の体に、二本の長い剣を持っていた。体は機動力を上げるためか、細い。
地面に落ちた瞬間、ガードウォリアーはぺペロンに斬りかかってきたが、準備をしていたため、簡単に対処できた。
あっさりと攻撃を受け止め、その後、剣を抜き、ガードウォリアーを斬り裂いた。
部下達も簡単に倒していく。
完全に準備できていなかったのか、リーチェとパナだけが、苦戦していた。ファナシアがすぐに援護に行き、倒した。
「よし、殲滅完了」
「び、びっくりしました」
リーチェが冷や汗をかきながら呟く。警戒しろと言われたが、具体的に何が来るかは知らなかったので、動揺してしまった。パナも同じく少し息を荒げている。
ガードウォリアーを全滅させた直後、転送陣の光が復活する。
「よし行くぞ」
「気を付けろ!!!!」
ペペロンが転送陣に乗ろうとした瞬間、塔の内部に大声が響いた。
何だ、と思ってペペロンは声が聞こえた方を見る。誰かが塔に入ってきたみたいだ。
あれはさっきの冒険者パーティーだな、ペペロンは入ってきた者たちを確認する。
「その転送陣に近づくと…………あれ?」
リーダーのロックが、転送陣の周りで斬り裂かれ、残骸となって散らばっているガードウォリアーを見て、きょとんとした表情を浮かべた。
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