第8話 建築

2020年12月20日

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「よし。必要な物は全て集まったな」

 最初の方針で決めたものが全て集まった。部下達はやはり有能揃いで、全て集めるのに4時間ほどしかからなった。
 転移して来た時刻が分からないが、まだ日は高い。

「お腹減ったー」

 ファナシアが腹を抑えながら言った。
 食べずに仕事をしていたから、ファナシアだけではなく、皆、空腹になっていた。

「では食事を取るか……食料はこの蛇か?」

 頭が切られたジャアントアーススネークを見て、ペペロンはこいつ食えるのか? と思う。

「うん頑張って倒したんだよー」

 ファナシアがニコニコと満面の笑みを浮かべながら、自分が倒したとアピールした。

「そうか。よく頑張ったな」

「えへへー」

 ペペロンに褒められて、ファナシアは喜ぶ。

「どうやって食べましょうかー?」

 エリーが尋ねる。

「とりあえず、切り分けて焼いて食べればよくねー? ポチーお前斬ってくれー」

 ガスがポチに蛇を切ってくれと頼む。

「あのなぁ。ノーボにしろお前にしろ俺の剣をなんだと思ってやがる。包丁でも斧でもねーんだぞ、おい」

「じゃあ、アタシが斬る!」

 蛇を切ることをポチが断ったら、ファナシアが斬ると言い出した。
 ファナシアは二本の剣を引き抜いて、蛇の前に立ち、

「サウザンド・スラッシュ!」

 千の斬撃を放つ究極の剣技、サウザンド・スラッシュを放った。

 巨大な蛇が細かく切り分けられる。

「おいおい、蛇切るのになんつー技使ってんだあいつ」

 ポチが頭を掻きながら、呆れたような表情でその様子を見ていた。

「じゃあ、焼きましょうかー。木を切ってそれを集めて、フレイムで燃やしましょう」

 木を切って集めてフレイムで燃やし焚き火を作る。
 その後、串を作りそれを蛇の肉に突き刺して、焚き火に当てて焼き始める。

「では、私が最初に毒味をしましょう」

 ララが最初に蛇の肉を食べた。
 もぐもぐと食べる。表情を見る限りそこまで美味しそうではなさそうである。

「ちょっと生臭いですが……まあ、毒などはないようです。食べられますわ」

 ララの感想を聞き、食えると確認してペペロンも食べる。
 感想通り、かなり生臭かった。でも、食えないわけではない。弾力があって歯ごたえがあるところは、ペペロン的に好きだった。

 その後、皆で蛇を食べる。デカすぎたのでだいぶ余った。保存する倉庫も無いが、そのまま置いておいても明日までは持つだろうとペペロンは判断する。気候もそこまで暑い季節ではない。

「よし。では、建築を始めるぞ」

 ペペロンの合図で、取ってきた材料や買ってきた道具、設計図を使って建築を始める事になる。

 部下達が合図と共に動き出すが、ペペロンは、そういえば建築って、ゲーム時代は全て部下に任せてたな……と思い出す。

 マジック&ソードの建築のシステムはかなり欠陥がある。
 建築のやり方は、設計図を地面に置いて、その後インベントリに必要な道具や資材を入れる。
 そうすると、「○○(設計図に描かれている建造物)を作りますか?」と聞かれるので、「はい」と言えば作り始める。
 そのあいだ、製作作業者はその場から1歩たりとも動く事ができない。
 時間の経過を早くできるので、簡単な製作物ならいいのだが、時間のかかるものは作っているあいだ退屈するのだ。
 とある非VRゲームを参考にして、マジック&ソードは作られている。非VRゲームでは待ち時間があまり苦にならなかったり、操作キャラを変えたり出来るのだが、VRでは待ち時間は通常のゲームよりも退屈に感じる。そして、操作キャラの切り替えは技術的に不可能だった。
 VR用のシステムに変えなければいけなかったのだが、そのまま再現してしまったため、このシステムはかなりプレイヤーから不評である。

 ペペロンもこのシステムはさすがにどうかと思っていたので、建築は部下達に完全に任せていた。
 ちなみに研究所で行う研究も同じ仕様であるため、こちらも部下達にほとんど任せていた。
 なので、建築や研究のスキルはまったく上がっていない。役に立てるのだろうか? とペペロンは思う。
 すると、

「いつものようにペペロン様はお休みになられていてください」

 とララが言ってきた。

(そうか。ゲーム時代はひたすら見ていたから、現実になっても見ていていいんだな)

 ペペロンはそう思い、イスに座って、部下達が建築する様子を眺める。
 最初は研究所を作る。拠点を発展させるためには1番重要な建物になる。
 部下達は、てきぱきと研究所を作り始めた。

 ゲーム時代とは作っているようすがかなり違う。
 現実だから当たり前だが、リアルにちゃんと作っているように見える。ゲーム時代では、製作作業者はまったく動かず、勝手に骨組みが出来て、家が出来てって感じだった。

 しかし、とにかく作業速度が早く、1時間くらい作っていたらもうほとんど出来ている。建築スキルのLvは全員カンストまで上がっているとはいえ、ここまで早いかとペペロンは驚く。

 1時間30分くらいで家が1つ建つという神業を見せられる。

 その後、部下達はノーボも入れるくらいの大きさの家を作る。

 ……しかし、見てるだけってかなり暇だな。とペペロンは部下達の作業を見ながら思い始める。暇なうえ、なんだか自分だけ座っているといたたまれない気分になる。

(ゲーム時代とは違って、ちゃんと作っているから暇にはならないだろうし、手伝うか。てか、マジック&ソードもこんな感じで、ちゃんと作っている感じにすればよかったのにな)

 ペペロンはそう思って立ち上がり、

「今日は私も手伝おう」

 そう言ったが、

「駄目です!」

「そうです。ペペロン様にこのような下賎な雑務をお願いするわけには参りません!」

 エリーとララに拒否される。

「いや、しかしだな」

「分かります。ペペロン様はお優しいので、我々の気持ちを理解しようとなさっているのでしょう。大丈夫でございます。我々はペペロン様のために働くのを至上の喜びとしておりますので、どんな作業でも苦にはなりません。どうかペペロン様はお休みになられてください」

「……そうか」

 そこまで言われて、なお食い下がる事はペペロンにはできなかった。
 いや、暇なだけなんだけどな……と思いながらも再び椅子に座り、言われた通り休む事にする。仕方なく、暇な思いをしながら部下達の作業風景を見守る。
 しかし、建築が下賎な雑務と言っていたが、金稼ぎにモンスター倒しに行くのは違うのだろうか? ペペロンは疑問に思った。建築はゲーム時代まったく手伝っておらず、モンスター退治にはかなり積極的に行っていたので、部下達の中では、モンスター退治>>>>>建築という感じになっているんだろうと、ペペロンは解釈した。

 部下達は作業し続けた。
 大きな家、野菜畑、食料庫、井戸、松明を作った。これで少しは拠点らしく見えるようになった。

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